今月13日に法務省入国管理局が発表したプレス・リリースによれば、2017年に難民認定申請を行った外国人の数は、対前年比で約80%増の19628件(速報値)で、過去最高だったという。驚くべきは申請者数トップ3の国籍である。フィリピン人が最多で4895人、次いでベトナム人3116人、スリランカ人2226人となっている。国籍別でみたこれらの国々の申請者数の対前年比増加は、それぞれ347%、291%、237%という異常な状況である。
勿論、国際政治的に見て、これらの国において難民・避難民を大量発生させるような特別な事情があった訳ではない。事実、全申請者のうち実際に難民認定を受けた者は20人、難民と認定されなかったものの人道的な配慮を理由に在留が認められた者は45人に過ぎない。このうち、上記トップ3の国からの申請者は当然ながら一人もいない。
何故、アジアの国々からの難民申請が増えているのか。その最大の理由は、在留期限の過ぎた技能実習生が、難民申請することによって日本で就労し続けようと意図する事例が著増していることである。彼らは、申請後6ヵ月が過ぎれば(審査結果が出るまでの生活維持のためとの理由で)就労が認められる。留学生の場合も同様の「偽装申請」が増えている。
しかし、考えてみるまでもなく、技能実習生あるいは留学生として日本で一定期間を過ごした者が、在留期間の満了を前に (あるいはその直後に) 俄かに難民認定を申請するのは理屈に合わない。法務省の説明によれば、これらの申請者の申請理由が、本国における友人・知人とのトラブルだったり、借金問題だったりするとのことであり、難民認定条約に規定される「難民」に明らかに該当しない者が多いという。
法務省もこうした状況に頭をかかえている。難民申請の審査に要する行政経費も馬鹿にならない。こうした事情を背景に、先月、同省が発表した「運用の見直し」によれば、➀案件内容の振り分け期間を設けて速やかに措置を執ること、➁難民認定の可能性の高い者には速やかに就労可能な在留資格を付与する一方、明らかにその可能性のない者には在留を許可しないこと、そして、➂本来の在留資格に該当する活動を行わなくなった後に難民申請する者(すなわち元技能実習生、留学生など)には就労を許可せず、在留期間も3ヵ月に短縮すること、の諸方針が明確にされている。
特に、この⓷は重要であり、厳格に運用されれば難民申請者の数は大幅減になろう。技能実習生を監理する団体や留学生を受け入れる教育機関(特に日本語学校)への周知も欠かせない。ただ、何としてでも就労し続けようとして失踪する者が一時的に増える可能性があるので、不法滞在者を雇用する側への注意喚起、悪質な雇用者への罰則強化も必要であろう。それと、もう一つ、難民認定申請書を代筆して荒稼ぎしている「代書屋」ともいうべき業者が存在するので、彼らに対する警告も有用である。難民認定を受けられなかった者に「不服申立書」を提出させるべく、更に書類を用意して代書料を稼ぐような悪徳業者の存在も耳にする。勿論、シリアやアフガニスタンなどの紛争地から命からがら逃げて来た者を助けようとする人道団体・NGOもあるので、「悪徳業者」との峻別が必要なのは言うまでもない。
最後に、難民認定申請者の出身国政府との関係も検討すべきであろう。明らかに難民認定申請の理由のない国(フィリピンやベトナムなどの東南アジアの国々)の者が申請してくる場合は、当該政府に申請者の氏名を通報し、送り出し機関や仲介業者に警告を発出してもらうことも有用である。技能実習生や留学生の中には日本の制度に無知な者が多く、彼らが「悪徳代書屋」に騙されているケースもあるからである。また、ベトナムなどからの若者は訪日前に(仲介手数料や預託金支払いのために)多額の借金をし、その返済のために日本での就労継続を余儀なくされているケースも少なくないと聞く。出身国内での啓蒙が必要な所以である。