中国の「一帯一路」構想の一環として建設されたスリランカのハンバントタ港が2017年、借金のカタとして中国に99年間譲渡されることになった。ベルギーのセーブルルージュ港は17年、港湾運営会社が中国に買収されてしまった。オーストラリアのダーウィン港も15年、中国に99年間の運営権を取得された。アラブ首長国連邦(UAE)のハリファ港も16年、埠頭の35年間の利用権を取得されてしまった。掠め取られてしまった港や特区を並べ揚げればキリがない。これはアヘン戦争後の英国のアジア植民地化の手口とそっくりだ。
感想を問われた麻生太郎・経済財政相は昨年11月29日の参院予算委員会で「サラ金にやられたようなものだ」と、吐き出すような口調で述べた。一帯一路の建設資金は中国が設立したAIIB(アジアインフラ投資銀行)が供給しているが、資金の利子は7.1%。ここから何十億ドルも借りれば途上国ならずとも元金の返済ができなくなるのは当然だろう。AIIBに参加している国は70ヵ国にのぼるが、皆が皆、出資している訳ではない。ドイツやフランスは中国の顔を立てて加入しているが、日本と米国は加入しなかった。アメリカは世界銀行、日本はアジア開発銀行を持ち、途上国の開発を場所を選んで着実に進めているからだ。
これに比べて中国のやり口はヤクザさながらの手口である。インド洋の島国モルディブは中国から15~20億ドル(約1580~2110億円)を借りたが、返済不良に陥り、2019年中にも中国への領土割譲が不可避になっている。
ところで、昭和40年代の話だが、自民党は田中角栄氏と福田赳夫氏の政権争いが激しかった。公共事業大好きの田中氏は新幹線、道路工事で成長率7%を目指すというスローガンを掲げた。誰もが景気が好いと歓迎したものだが、福田氏は強く反対してこう言った。
「7%成長を10年続けるということは、この日本列島の上にもう一つの日本を乗せることだ。それには資源も労力も全て今の2倍必要となる。資源集めによって世界中に軋轢を起こすこととなる」
中国の経済成長率は昨年は6.5%だったが、前年は6.9%だった。今後も7%程度でいくという。いま世界中に起こっている現象は福田赳夫元首相がいう中国の軋轢そのものではないか。
バブル崩壊のような金融現象によって、世界的に深刻な経済不況に陥る可能性がある。08年のリーマンショックの折には中国が50兆円にも及ぶ不況対策を打って何とか凌いだ。しかし、今回の世界各地でくすぶっている破産現象は、いつか一挙に表面化するのではないか。
一方で中国は軍備増強にも熱心だ。習近平氏は2050年には軍事的にも米国と並ぶ超大国を目指しているという。一帯一路と軍備増強の資金はどう集めるつもりなのか。
(平成30年3月7日付静岡新聞『論壇』より転載)