「トランプ大統領、対中制裁発動」
―中国排除のTPPに米国加入意志示す―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 トランプ米大統領が3月22日、大規模な対中経済制裁を発動したことによって、トランプ氏の「アメリカ第一」の意味が明確になった。軍事面については昨年11月、ホワイトハウスが発表した「国家安全保障戦略」や、今年1月に国防総省が発表した「国家防衛戦略」を通じてトランプ哲学は、はっきりしている。中国とロシアを世界秩序の改変を目指す「現状変更勢力」と位置付けた。米国の懸念はもはやテロではなく中露両国との「戦略的競争」だと明言している。
 中国はこの3月習近平終身主席体制を決定した。今後の成長率は6.5%目標で推移するという。18年の国防予算は前年実績費8.1%増の約1兆1069億元(約18兆4000億円)。公表された軍事費は1988年から10年間で3.6 倍となり、過去29年間を見ると、実に49倍となる。周囲に脅威がないのにこの軍事費の膨張は異常だ。自国の中華思想のみが動機ではないか。
 その軍資金を集められたのは米国を始めとする資本主義市場だ。米国の対中貿易赤字は17年に3752億ドル(約38兆円)で米国の貿易赤字の45%を占める(因みに対日赤字は18%)。加えて中国が周辺国に一帯一路を強要して、世界的な公共投資ブームを起こしている。AIIB(アジアインフラ投資銀行)に中国政府が投資して、その資金を借りる形で事業が進められている。しかし金利が高く途上国では元利が支払えない国も続出。その場合、港の所有権を99年間借用するという。英国が香港を植民地にしたやり方が各地で頻発している。米国に対抗する異様な大国が、米国を食い物にして育ちつつある。
 ひたすら金を注いで新しい敵国を育成し、加えて北朝鮮に核・ミサイル開発まで許したのは紛れもなくオバマ前政権だ。トランプ氏を選んだのは当然のような気がする。アメリカ第一の意味は「一級の国を目指そう」という心意気を示したものだろう。
 トランプ氏は17年5月にNATO首脳会議で、24年までに各国は「自国の国防費をGDPの2%以上にせよ」とハッパをかけた。加盟28ヵ国のうち負担義務を果たしていたのは米、英、ギリシャ、ポーランドの4ヵ国のみだった。これではクリミヤ半島を取られても自業自得だ。バルト3国も危機感を募らせている。
 トランプ氏の対中輸入制裁は鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を上乗せするほか、知的財産権を侵害しているとして600億ドル規模の制裁関税をかけるという。
 精密機械でも新兵器でも丸ごと分解して部品まで作る。こういう泥棒のような国を加えて貿易協定はできない。安倍首相が考えていたのは、中国を排除してTPPを作る。少なくともTPPの中では不正は許さないというもので、トランプ氏は加入の意志を示している。世界には新しい仕組みが必要なのだ。