我が国で暮らしていると連日のようにテレビも新聞も政権批判の報道を続けており、よほど世の中が悪くなっているのではないかと錯覚する。外国人の目から見ると、モリカケの問題一つとっても(その背景に政治家への多額の贈賄が絡んでいるというのならともかく)公務員による総理への「忖度」が問われている事案でこれだけの騒ぎになっていることが不思議に思えるらしい。国際情勢が風雲急を告げ、多数の死者が出る紛争が世界のあちこちで発生している深刻な状況を考えれば、今の日本は(極楽トンボとまでは言わないにしても)たいそう「お幸せな国」に見えるのかも知れない。
事実、日本に対するここ数年の国際的な評価は、悪化するどころか一段と上昇しており、トップクラスの「良い国」になっている。私が常日頃から注目している大規模な国際世論調査が3つあるが、そのいずれでも2017-18年に日本に対する評価は過去最高のレベルに達している。この種の調査ではカナダとスイス、あるいは北欧の国々がトップ・ランキングの常連になっているが、今や日本への評価はこれらの国々に迫りつつあるのである。
その1つが今年1月に米国誌(US News & World Report)が発表した「世界のベスト10ヵ国」という世界規模の世論調査結果である。80ヵ国を評価対象に、経済・政治、文化、生活など65項目について世界の21,000人から聞き取ったもので、日本は世界第5位にランクされている。何と、スウェーデン、オーストラリア、フランス、米国などより上位にいる。個々の調査項目で見ても、文化、企業家精神、国力、経済力、未来志向、世界への影響力、生活環境、教育のそれぞれでトップ10に入っているという。日本人自身からすれば「ウソだろう!」という調査結果だが、外国人の目には違って見えるのである。
もう1つ、先進国ベースでは最大規模と言われる国際経営コンサル会社「レピュテーション・インスティテュート」による世論調査の結果(昨年9月発表)を紹介する。これはG8諸国内の39,000人以上を調査対象に、GDPで世界上位55ヵ国についての「評判」を聞き取ったものである。質問項目は、国や企業の価値、ブランド力、評判などで、日本はポイントを2つ挙げて第12位にランクされている。日本より上位の国は、カナダとオーストラリアを除けば、北欧、スイス・オーストリアなどの小国ばかりで、イタリア(14位)、ドイツ(16位)、英国(18位)、フランス(19位)、米国(38位)、ロシア(51位)などのG8諸国(今はロシアを除くG7)は軒並み日本より下位にランクされている。因みに、韓国は第35位、中国は47位である。
3つ目は、英国BBCが概ね毎年実施している世界世論調査で、世界の16ヵ国とEUを評価対象に、世界19ヵ国の18,000人から「世界に良い影響を与えている国」を聞いたものである。調査期間は2016年12月~17年4月で、結果が発表されたのは昨年8月である。日本(良い影響56%、悪い影響24%)はカナダ、ドイツに次いで全体の第3位で、フランス、英国、米国などより上位にいる。中国(良い41%、悪い42%)は7位、韓国(良い37%、悪い36%)は9位である。因みに、前回調査(2014年)と比較すると、日本は全評価対象国・地域の中で最も評価が上がった国で、良い影響が49%→56%へ、悪い影響が30%→24%へと大きく変動している。(なお、今回の調査では、日本と同様に、韓国でも調査が行われておらず、これが日本の評価を上昇させた要因との指摘がある。)
この他、先進国の旅行誌・情報誌が世界の都市を対象に「住みやすい都市」、「魅力的な都市」、「旅行したい都市」などの各種国際世論調査を実施しているが、最新の調査では東京が軒並みトップにランクされている。犯罪、医療、親切さ、清潔さ、公共交通機関などが評価項目だが、「世界一」との総合評価には、私を含む東京在住者はここでも「ウソだろう!」と叫びたくなるが、調査結果はそうなのである。
日本人には自己を卑下する傾向があり、世の中に対する見方も総じて悲観的である。テレビ、新聞などのメディアが連日流す情報を追いかけていると「日本はよほど悪い国」になっているような印象だけが残るが、世界から見れば日本ほど良い国はないのである。このことを、世界の世論調査が私たちに教えてくれている。