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「慰安婦問題」の最終的かつ不可逆的解決なるか?
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首都大学東京名誉教授
鄭 大均
安倍晋三首相と朴槿恵大統領の間で「慰安婦問題」の最終合意が行われた。安倍晋三氏が「軍の関与のもとに多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」ことを認め「心からのお詫びと反省」を表明した。これに対して韓国側は慰安婦支援の財団を設立し、日本側は10億円程度を拠出する。その代り慰安婦問題は「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」という。村山談話や河野談話を取り消したいと思ってきた安倍首相が、全て認めてしまった上に、かつて韓国が慰安婦に受取りを拒絶させた支援金10億円を払うというのは並大抵の譲歩ではない。この屈辱を飲んだのは偏にこの問題を蒸し返したくない、「不可逆的に解決したい」一心だったことが窺える。
安倍首相はこの願望を実現させるため、米国務省に「談話を歓迎する」と言わせて証人席に座らせた。
しかし韓国内では日本大使館前に「慰安婦像」を建てた挺身隊問題対策協議会(挺対協)が像の撤去に猛反対している。朴大統領はこの“民間団体”を説得できないようだ。「像が撤去されなければ10億円は拠出できない」と日本側は言っている。恐らく像はそのままで10億円は支払われないだろう。
この“取引”は日本側の大譲歩で、軍の関与まで認めてしまった安倍首相は非難され、不可逆的解決どころか、今年中にも蒸し返されかねない。
韓国や中国は「歴史認識」という言葉で日本に迫っているが、何故こうも実利のない話で頑張るのかを考えてみたい。中国史の泰斗・岡田英弘氏によると中国大陸には紀元前221年の秦の始皇帝に始まって漢、唐、元、明、清、6代の国ができた。それぞれの主は漢民族、満州族、蒙古族、回族、チベット族と5民族交代の歴史だ。民族が変わって国家名も変わると新興国は何故代が変わったかの説明をせざるを得ない。これを易姓革命と言うが、自らの正当性を言うためには過去の事実も無かったと言い、新しい現実が不可避であったという必要がある。
韓国は明以前は中国の一県で、明の時代に李朝を名乗ることが許された、れっきとした中華圏の一員で、米韓条約がありながら、とめどなく中国に傾いているのも歴史の必然なのである。
いま中国は南京事件をユネスコ遺産にしようと懸命になり、韓国が日本による20万人の慰安婦連行を国際社会に言い募る。これは自らに誇るモノがないから、周囲の国を貶めて、自らの優秀性を強調したいからだ。朴大統領の「告げ口」外交を聞いて日本人は唖然とする。朴大統領は堂々の外交と思っているのだろうが、日本人には“告げ口”は恥しいというモラルがある。
安倍外交が成功したのは、世界に日本の態度を明らかにして尊敬を勝ち得たことだろう。中・韓両国は歴史認識を語って世界の尊敬を集めることは難しいと自覚できるかどうか。
(平成28年1月13
日付静岡新聞『論壇』より転載)