国会の「モリ・カケ問題」はもういい加減にしてもらいたい。この問題をほじくれば、汚職問題や行政の不正が糾されるというのであれば、国会が2年がかりで取組む意味はある。しかし、これだけ叩いても金が動いた気配は全くない。犯罪でもないものを犯罪もどきに仕立て上げて、安倍内閣を糾弾するというのは時間のムダ、国民の税金のムダというものだ。
市会議員、県会議員、国会議員という議員職は、よろず陳情を受けて、しかるべき道筋をつけてやるのが仕事の一つだ。世の中には困ったことが山ほどあり、それにぶつかった市民はどこに処理を頼んだらいいかわからない。議員の事務所はこういう庶民の不満を役所に取り次いで片付けてやるのも仕事のうちだ。
加計学園の獣医学部や森友学園がそういう陳情先として安倍首相や昭恵夫人を選んだとしても不思議ではない。安倍晋三氏と加計学園の加計孝太郎理事長とは若い頃からの親友である。加計氏が安倍氏の情実を使って獣医学部設置を働きかけたのではないかと疑われた。安倍氏は当初から「親友だからといって便宜を図ったこともなければ、向こうから頼んでくることもない」と明言していた。その獣医学部は愛媛県と今治市が国家戦略特区に指定されたあと、今治市に設置された。52年振りに獣医師の定員が崩されたのである。左翼野党は首相の言明も信用せず、今治市が特区に指定された事実も怪しいと追及。その間にやり取りされた役所の文書も全て出せという。たまたま、愛媛県にあった文書に「平成27年2月25日に加計理事長と首相が15分程度面談した。(その際)首相は国際水準の獣医大学の考えはいいね」とコメントしたという。左翼野党は「証拠が上がった」とばかりに小躍りし、朝日新聞などは証拠文書が出たと大記事を載せた。首相官邸の面会記録には加計氏との面談記録は無かった。
一方、愛媛県の新文書について県は「当時の担当者が、実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに誤った情報を与えた」と告白。「県の文書は信用できないのか!」と怒鳴っていた中村時広愛媛県知事も振り上げた拳の処理に困ったろう。27日の参院予算委員会は、でっち上げの県文書をめぐって全くの時間の空費、マンガである。
森友学園問題は9億円余の国有地を8億円まけて学園に払い下げられた問題だが、もともとゴミの混じった国有地は二束三文に値引きされるもの。引き下げに当たって「昭恵夫人が口を利いたせいではないか」と疑われたものだ。国有地値引き交渉の記録が改竄されたり、財務省の監督とはこの程度のものかと呆れたが、これは国会の仕事でもなければ、内閣の責任を問うべきものでもない。
振り返ってみるとモリ・カケ問題は2つの大きな陳情事項に過ぎない。国家に降りかかっている朝鮮半島の火の粉は戦後最大のもの。効果的な守備体制や防衛にどう日本が向き合わねばならないかを聞きたい。
(平成30年5月30日付静岡新聞『論壇』より転載)