第2回 平和安全法制研究会 報告概要

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お知らせ JFSS事務局

日 時:平成29年6月27日
報告者:石下義夫 氏(国連カンボジア暫定機構(UNTAC)派遣 元第2次施設大隊長)



<報告の要点>
 任務を終え帰国後、国内で約半年間講演依頼が続いたが、それ以降パタリとなくなった。国民の関心は長くて半年、現時点でも同じだと思う。

 〇 派遣施設大隊の状況
  • ・指揮官交代当日、国連ボランティアの故中田厚仁氏の棺がヘリコプターで移送されてきた。指揮初日であり、非常な緊迫感をもった。
  • ・平成5年4月16日、上級司令部の指示で大隊の集積場から秘密裏に撤収した。この処置は、後にUNTAC本部から批判を受けた。

 〇 活動経験からの所見教訓
  • ・派遣準備は3ヵ月、寄せ集め部隊のため実質1月の準備期間であった。この間の訓練は現地での施設作業関連が中心で、安全確保訓練は実施していなかった。このため、現地で急遽警備訓練、施設の防護強化を行った。
  • ・派遣前に現地の情勢、PKOの特異性(全体の組織、指揮系統、装備品管理等)についての教育はなかった。全て現地で確認し、実行した。
  • ・選挙監視要員の派遣などの情報提供はなかった。突然同要員の安全確保についての指示がきた。投票所の巡回警備を行うこととなった。
  • ・医官、看護師及びレンジャー要員からなる医療救援チームを編成し待機させた。いわゆる駆け付警護の先例となるチーム。遺書を書いた隊員もいた。
  • ・ターゲットになりやすい日本の体質を改善することが必要である。日本・日本人を攻撃すると大騒ぎするので、敵にとっての宣伝効果が高い。
  • ・他国のPKO部隊との連携は慎重に、綿密な調整が必要である。もともと参加姿勢が違うこと、銃の使用基準が日本施設大隊とは異なること、言語が違うこと――に留意する必要がある。 
  • ・二重指揮については、国連本部、現地司令部、参加PKO部隊等に対して日本の制度、行動の限界を事前に説明し、理解を得ることが重要である。
  • ・PKOに継続して参加することは有意義である。但し、私の時代より大きく変質しており、参加形態をよく検討することが必要である。
  • ・PKO25年の歩みを検証することが必要である。派遣態勢が整備され、平和安全法制が制定されたことは評価できる。また、教育訓練が充実し、派遣経験が蓄積され、経験者が増えていることは喜ばしい。
  • ・今後継続して見直すべきこととして、やはり武器使用のハードルが高いこと、犠牲者が発生した場合における国民世論の動向、危険を伴う任務遂行に関する参加隊員の意識の把握――がある。