防衛省が公開したのは、火器管制レーダー波照射の音とその音の波形だ。しかし、これで、韓国海軍「クァンゲト・デワン」級駆逐艦がP1哨戒機にレーダー波を照射したことを、完ぺきに証明できたわけではない。
防衛省が公開した音とその波形は、P1哨戒機が射撃管制レーダー波を受けたときのものに間違いはない。私も、韓国駆逐艦「クァンゲト・デワン」が、照射した火器管制レーダーによるレーダー波の音だと確信している。
防衛省の最終見解についての補足説明資料を見ると、ほとんどが正確に作成された信用できる情報であると判断できる。だが、下図のレーダーの種類と特徴(2/2)だけでは、十分に説得できる資料とは言えない。なぜかというと、捜索用レーダーと火器管制用レーダー波を音に変換して比較したデータであり、レーダーから発せられたパルス信号そのものではないからだ。防衛省平成30年12月発表の資料では、比較したデータついて「受信波の特徴」と記述されているが、平成31年1月の資料(1月21日)では、ほぼ同じ波形の図であるにもかかわらず、「レーダー波を音に変換したデータ」と記述してある。これらのデータの波形は、受信波(パルス信号)なのか、パルス信号を受信した音の波形なのかが正確には理解できない。私は若い頃、自衛隊で防空レーダー修理を受けた経験がある。この事件の後、私の経験を踏まえ、2人のレーダー専門家の説明も聞いた。防衛省の説明資料では完全に理解できない(私の知識不足かもしれない)。
図 防衛省補足説明資料(平成31年1月)の一部
図 レーダーの種類と特徴(平成30年12月)を切り取ったもの
これまで何度も軍事常識では考えられないことを発表してきた韓国国防省に、防衛省が公開した音では、「クァンゲト・デワン」の火器管制レーダーのものとは特定できない」「実態のない機械音だけだ」あるいは「照射を受けた日時を正確には証明できない」と言われてしまえば、それで終わりだ。
では、絶対的な証拠は何か。それは、過去に受信した「クァンゲト・デワン」のパルス信号の特色だ。例えば、パルス幅、パルス間隔、極めつけは、パルスの形状であり、。百万分の1秒の単位の詳細なデータだ。これが今回受信したものと一致していると言わなければ完全な証拠とはならない。さらに、その日時が、秒単位で正確に証明できるものでなければならない。
しかし、この証拠を相手に見せると、自衛隊の情報収集能力を公開することになる。したがって、絶対に見せてはならない。
日本は、韓国が火器管制レーダー波を「照射した、しない」にこだわることなく、今後も予想される韓国軍によるレーダー照射、さらには南北が統一した時の脅威に備えることを考えるべきだ。
図 レーダー波(パルス信号の特色)イメージ