日本の防衛力は「今の程度でよい」と思っている人はざっと60%で、「増強した方がよい」が20%を上回ることはなかった。ところが最新の内閣府の世論調査によると、04年に14.1%が「増強した方がよい」だったものが、18年には29.1%と急増している。過去の統計を遡っても15年で15%も上昇した事例はない。
背景に米中の貿易戦争、米国の北朝鮮との非核化を巡る争いがあるのだろう。これまでも中国の漁船が日本の監視船にぶつかってきたり、韓国の駆逐艦が日本の哨戒機をレーダーで照射した小競り合いはあった。しかし今起こっている現実は、米韓軍事演習の中止、米国の北朝鮮への締め付け強化と緊張は高まっている。この先、5Gを巡ってファーウェイを使うか、使わないか壮絶な足の引っ張り合いがあるだろう。米中は「宇宙軍創設」の域で争うことになる。
これまでは相当の紛争が起こっても、軍備を増やせという「国民的声」までいかなかった。なにせ戦後の国防問題は「非武装中立論」からスタートした。米ソ冷戦下にスイスの国防省を訪問して、スイス軍の体系や武器など取材したことがある。帰り際「日本には非武装中立の政党がありますよ」と述べたら、「信じられない」と言われた。スイスが赤十字を創設したのは、1860年だ。動機は同じスイス人が仏や独の傭兵となって、同じ人種で撃ち合う場面を見た。何人であれ、敵も味方も助けることを思いついたのだという。
ヨーロッパに7年滞在した印象で軍縮や核廃絶はできっこないと確信した。せめて可能なのは軍備の縮小だろう。あのヨーロッパに英国を含めれば30もの国が共存することは奇跡のようなものだ。スイスが存続しているのは、スイスをどこかの国が占領すれば、4ヵ国の戦争に発展するからだ。スイスがそれをよく知っているから、攻め込まれそうな弱点を作らないのだ。
日本はスイスに比べると平和的な手段で近代国家を形成してきた。日本の廃藩置県などはヨーロッパでは考えられない。支配者である武士が商人に金を借りたという。何故、武士がそんなに金がなかったのか。何故、税金を上げなかったのか。政治を、支配経験もない素人や下級武士に任せられたのは何故か。
全国で刀狩りが行われ、軍人や警察以外に武器を持たないというと、その思想、精神をスイスでは犠牲、献身だと思うようだ。
韓国は近いうちに中国の側に立って、日本に敵対行為をしてくるだろう。今の憲法では1機目を撃たれた後でなければ攻撃できない。もし1機目でも撃ち返せるなら、韓国は照射などしてこないだろう。そのためにも憲法9条2項を早急に削除すべきだ。9条1項はパリ不戦条約の理想で当然のことを言ったまで。2項には「交戦権はこれを認めない」とあり想定外のことが起こっても自衛権は行使できないことになっている。
(平成31年3月13日付静岡新聞『論壇』より転載)