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国家を信頼する日本人と自国を信頼できない韓国人
―「両班政治」から離脱できない韓国の悲哀―
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会長・政治評論家
屋山太郎
13日の韓国総選挙(定数300)で与党セヌリ党は目標の過半数を確保できず惨敗した。任期が残り1年10ヵ月となった朴槿恵大統領の政権運営は更に厳しいものとなった。選挙の敗因は社会に膨満する若者の不満と言われている。
2015年の大学卒の就職率は56%で、今年2月の青年(29歳以下)の失業率は年12.5%に達した。因みに日本の大卒の就職率は常時、80%以上で、高卒の就職率の方が更に高い。
驚くのは韓国の就職希望者の9割方は外国企業だという。国の中心になるべき青年が「外国企業願望」だという根拠について、拓殖大学の呉善花(おそんふぁ)教授は「韓国の会社の人事制度を信用していないからだ」という。儒教は13世紀に朝鮮半島に入り、朝鮮王朝の政治理念として使われた。特に中国の「明」から「李氏朝鮮」を名乗ることを許された王朝は儒教にかぶれてしまう。儒教は「士農工商」の階級制度を正当化するのに便利で、朝鮮社会の芯棒のようなものになった。儒教は日本にも12世紀に渡来し、江戸上期に武家社会を正当化する理念として用いられた。「士農工商」の身分を確立したが、韓国の「商工」と日本の「工商」が逆になっているのは、日本では体を動かす人ほど偉いと評価したからだと言われている。いずれにしろ日本の儒教は、神道があり、仏教があった上に加えられたもの。一辺倒ではなかったから、明治維新による武家社会の崩壊と共に階級制度は崩れ去った。
ところが韓国だけは頑として残っている。儒教にかぶれた李氏朝鮮の政治を「両班政治」と呼ぶが、これは貴族政治にほかならず、行き着いた所は「貴族か貧乏人」の社会だった。支配階級にあらずんば人でない社会が確立された。日本併合によって国民の30%に及ぶ奴隷が開放された。両班政治は中国を範としたから漢字を尊び、折角、自らが発明したハングル文字はお蔵入りになっていた。日本が韓国統治に当たって普及させたのがハングルだが、ハングルは平仮名と同じ表音文字である。韓国には同音異義の言葉が多く、難しい単語を省く習性となった。何よりも困っているのは大学生や院生が主任教授の漢字入りの論文を読めなくなっていることだと言う。
近代社会は「農工商」の働きによって豊かさが決まる。その中で農工商を蔑む風潮が消えないのでは社会は発展しない。航空会社の社長の娘が、機内の乗務員のピーナツのサービスが悪いと言って機を引き返させたなどという現象は、両班政治が厳として残っていることを意味する。これでは若者は外国企業に入りたいと思うだろう。
韓国銀行が「世界における長寿企業」を調べたところでは、200年以上続いている企業は全世界で5586社で、このうち日本は3146社だという。斯くも長寿企業が多い理由について同銀行の報告書は①日本では職人精神が尊ばれ ②血縁を超えた後継者選びが行われていることなどを挙げている。
(平成28年4月20
日付静岡新聞『論壇』より転載)