「憲法改正を阻む公明党」
―衆参同日選挙で与野党の組み換えを―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 安倍晋三氏は7年目の任期に入った。ポスト安倍の人物が見当たらないなどと言われるほどの天下人になったのである。しかし安倍氏が最もやりたいのは憲法改正、特に第9条に「自衛隊を設ける」の一言を挿入させることだった。ところが在任7年経っても本命の憲法改正には辿り着けない。この際、衆・参両院の同日選挙を宣言して、与野党の組み換えをしたらどうか。
 安倍氏はこれまで国政選挙を4連勝している。これだけの信を寄せられながら憲法改正に手を付けさせないというのは政党の沈没である。野党の考え方はまっとうな政党の考え方とは言えない。
 かつて社会党は国政選挙のキャッチフレーズとして3分の1議席の獲得を謳っていた。社会党は共産党と組んで3分の1をとれば、誰が与党になっても「憲法改正だけはできない」と称していた。ここから非武装中立論が生まれてくるが、現在の国際情勢の中で、なお非武装中立を打ち出すことはマンガである。
 物騒な世の中である。国連発足の際、核保有国は5ヵ国と決められていたのに、インド、パキスタン、北朝鮮、イラン、イスラエルと小国がひっそりと核保有国になっている。北朝鮮などは核ミサイルをかざして日本に「金を出せ」と脅すかもしれない。そういう時、こちら側から先に撃つか、撃ち返すしか方法がない。そんな時どのような対応ができるか専門家の自衛隊に我が身を預けるしかない。つまり現在のような国際情勢の中では、国民は震えながら事態に身を委ねるしかない。政党は一体、今まで何をしていたのか。公明党は20年も前、与党連立に参加したが、国民の恐怖をどう捉えていたのか。
 つい先日まで公明党は憲法改正反対を唱えていた。正確に言うと命を守るのに役に立たない条項について「改革」を唱え、第9条には手を付けないということである。「改正」といって安倍氏の苦悩に応えるふりをしているが、実際は何の役にも立っていない。
 公明党が自自公の形で連立に参加したのは実に20年も昔のことである。この20年の歩みを辿ると、増税の際の地域振興券といった公明党婦人部が喜ぶような提案ばかり。何のために与党になったのか。この党に国家的発想を求めるのは所詮無理なのだ。
 大阪維新の会は、かねてから大阪府と市が合併して「大阪都」を設立すべきだと主張していた。橋下徹市長が音頭を取って実現寸前まで来たが、最後の住民投票で惜敗した。
 現在、大阪市長(それまで府知事)の松井一郎氏が「都構想」を進めて、春の知事、市長選挙を見事に終わらせた。選挙前、公明党は大阪都構想に徹底的に反対していたが、市議会、区議会選等で見ると公明党の勢力は失墜。衆・参の選挙で同じような結果が出ると近畿の公明には大打撃である。そこで公明党は突然大阪維新に歩み寄り「大阪都」構想に賛成を打ち出した。これが政党といえるのか。
(令和元年5月29日付静岡新聞『論壇』より転載)