アメリカのドナルド・トランプ大統領への国民の支持率が7月末に記録破りの上昇を示した。
一方、日本のメディアではアメリカ通とされる人たちがトランプ叩きを続ける。「政策をわかっていない」「素養がない」「頭のなかは空疎だ」といった情緒的な非難ばかりで、現実のトランプ大統領の政策やそれを支持する多数のアメリカ国民の動向にはまず触れない。
トランプ大統領を貶すも、褒めるも、個人の自由な意見だが、トランプ政権がアメリカ国民の支持をまったく得ていないような言辞は危険なアメリカ誤認ともなりそうだ。
アメリカでは民主党リベラル寄りで、トランプ政権の政策にはほぼすべて反対するテレビ・ラジオ局「NPR(全米公共放送)」が主体で実施して7月22日に発表した全米世論調査結果ではトランプ大統領への支持率が44%となった。この支持率はNPRがトランプ政権の登場以来のこの2年半、定期的に実施してきた同種の世論調査では最高のトランプ支持率となった。
同調査ではこれまでトランプ大統領の支持率は35%から40%台前半で、前回の6月は43%だった。
今回のNPR調査でさらに顕著だったのはトランプ大統領に対する無党派層の支持が急上昇したことだった。6月の調査では35%だったのが7月には42%と、7ポイントも上がったという。大統領選挙では共和党、民主党の政党支持を明確にしていない中間の無党派層の動向がきわめて重要となる。
また同様にトランプ大統領には一貫して批判的なスタンスをとるワシントン・ポスト紙が7月9日に発表した世論調査結果でもトランプ大統領への支持率が同紙のこれまでの調査では最高の47%を記録した。
今回のNPR調査は7月15日から17日の間に全米約1400人の有権者を対象に実施された。この時期はちょうどトランプ大統領が下院の少数民族出身の女性議員4人に対して「母国へ帰ればよい」とツイッター発言をして民主党や主要メディアから「人種差別」と非難された直後だった。
同大統領はこの発言は人種差別ではなく、社会主義者やイスラム教徒のこれら女性議員たちが「4人の攻撃隊」とも評されるほどトランプ政権や共和党側に卑猥な言葉をも含む乱暴な非難を浴びせてきたことへの反論だとして、あくまで政治的な対立だと述べている。
民主党側でもナンシー・ペロシ下院議長がこの4人のあまりに過激なアメリカ的価値観への非難をたしなめたほどだった。下院本会議が採択したトランプ大統領への「人種差別非難決議」も共和党議員のほぼ全員に近い187人が反対しており、一般のトランプ支持層からは「母国へ帰れ」発言は熱い支持を得ていた。
トランプ大統領をめぐっては7月24日に下院民主党が主体となり、二つの委員会が「ロシア疑惑」を捜査したロバート・モラー前特別検察官を証人として招き、長時間をかけて証言と質疑応答を実施した。だが同疑惑の中心とされた「2016年の大統領選挙戦でトランプ陣営がロシア政府機関と共謀して投票を不正に操作した」という疑いには何の証拠もないことが改めてモラー氏自身の証言でも確認された。この結果もトランプ政権に有利な効果を生んだと言える。
さらにトランプ大統領は7月26日には選挙公約のメキシコとの国境の壁建設経費に国防費から最大限25億ドルを転用してもよいとする最高裁判所の判決を勝ち取った。議会での審議では下院で多数を占める民主党の反対でその捻出に苦労していた壁建設費の確保への大きな前進だった。
最近のこうした政治的展開もトランプ大統領への支持率上昇の要因になるとみられる。2016年の大統領選挙以降、国政レベルでの世論調査では最も正確な数字を出したとされるラスムセン社の7月26日発表の結果ではトランプ大統領支持は47%だった。
ラスムセン社は現在ではアメリカ国内の世論調査機関多数の中でただ一社、大統領の支持、不支持の調査を毎日、実施している。そのためトランプ大統領の一般の人気を測る指針としては広範に引用される。同社ではここ数ヵ月でもトランプ大統領支持が50%とか51%に達したことを発表してきた。
世論調査でこのように明示されるトランプ大統領へのアメリカ国民5割近くもの堅実な支持という事実は日本のトランプ評論家たちによって指摘されることは極めて稀のようである。まさか「不都合な真実」というわけではないだろうが。