「河野外相の駐日韓国大使への一喝、天晴」
―外交官の信条は無礼やウソを呑み込むことではない―

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会長・政治評論家 屋山太郎

 河野太郎外相が韓国の南官杓大使を外務省に呼んで「ホワイト国」問題を協議した際、声を大きくして「きわめて無礼だ」と叱責したのには胸がすいた。相手の出してきた妥協案はすでに何度も日本が断った案だったからだという。
 その後、河野氏の発言を話題にする人に多く会ったが、皆が皆「久しぶりにすっとした」という人ばかりだった。ところが朝日新聞(8月8日)に見解を述べた美根慶樹平和外交研究所代表は「こんな振る舞いをすれば、韓国国民は自分たちの代表が侮辱されたと受け取り、反日ナショナリズムに油を注ぐことになりかねない」と批判しているのである。「外交は主権国家同士の対等な付き合いが大原則」だという。美根氏は私もかねてより、よく知った立派な外交官である。日本外交はくだらないことで呼びつけて型通りの文句を言うケチなやり取りばかりだった。一連の韓国側発言、行動は韓国側に全く理のないものばかりだ。ケンカを売って、国内で反日運動の手掛かりにしようというケチな根性が丸見えだ。だからこそ河野氏の一喝でほとんどの日本人が気分を良くしたのである。
 美根氏は外務省の主流を歩いた有能な外交官だが、皆が皆こういう考え方をするのか。
 安倍政権になって韓国から元慰安婦に慰安金を払えという話が持ち上がった。安倍首相が朴槿恵前大統領との間で「10億円を出す」からこれで「最終的かつ不可逆的解決にする」との約束をとった。ところが文在寅大統領になると「これをチャラにして交渉をやり直す」というのである。国際協定並みの約束をしたのちに、ひっくり返してやり直す」という元首がどこにいるのか。
 そもそも慰安婦問題の成り立ちは中学校の教科書に「従軍慰安婦強制連行」という言葉が載せられたからだ。教科書を糺すための会ができて、まず「従軍慰安婦」という単語があったかどうかを検証したところ「ない」という。次に「慰安婦強制連行」という事実もなかったことが判明した。残るは「慰安婦」という言葉だけだが、中学校の教科書で「慰安婦」の意味だけ教える必要もあるまい。
 その検証の過程で教科書作りに注文をつけているのが左翼ばかりか、元インド大使もかかわっていることを知って驚天した。
 戦時中の新聞に「慰安婦募集、一ヵ月300円」との広告が載っていた。大学出が月給10円という時代だから、強制連行をする必要もない。それなのに「慰安婦狩りをやった」という吉田清治の作り話を新聞で取り上げたのが朝日新聞である。済州島の現地の記者が「そういう事実はなかった」と証言しているのに、朝日新聞は宮澤喜一首相の訪韓で8回も謝罪させた。全て外務官僚の振り付け通りだ。岡崎久彦氏という大物外交官でも「河野談話」で片付けた方がいいとの計算だった。外交官の信条とは相手の無礼も嘘もすべて受け入れろということなのか。
(令和元年8月14日付静岡新聞『論壇』より転載)