馬鹿げた公選法を改正すべき

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政策提言委員・元参議院議員 筆坂秀世

 参院選が行なわれている。だが街を歩いても掲示板以外、その雰囲気が全くない。あるテレビの世論調査では、「かならず選挙に行く」と答えた人はわずか47%だった。関心がないのだ。野党が弱すぎるというのが、その最大の理由だろう。だがそれだけではない。
 もう一つの理由に、日本の公職選挙法があまりにも規制が多すぎることがある。
 本来、選挙活動というのは、有権者がより多くの情報を得ることが出来るように、可能な限り規制を少なくすべきである。だが日本の公職選挙法はその逆なのだ。
 主要先進国で事前運動や戸別訪問が禁止されているのは、日本しかない。アメリカ、イギリス、ドイツ、カナダでは、そもそも選挙期間の規定がない。選挙期間がないのだから、事前運動などという概念がそもそも存在しない。「今日から選挙」という公示日も存在しないのだ。
 奇異に思えるかもしれないが、寧ろこの方が普通なのである。そもそも政党や候補者は、日常的に活動しなければならない。その積み重ねが選挙の結果として表れる。日常的な政治活動と選挙活動は、本来一体ものなのだから選挙期間がないというのは、合理的なのだ。
 戸別訪問も買収の温床になるというので、日本では禁止されている。これも日本だけの規制だ。候補者が有権者と話し合い、要望を聞き、政策や公約を伝えるというのは、候補者がどういう人物なのかを知る上でも貴重な機会である。日本の多くの有権者は、色々な候補者に投票しているが、直接、候補者と話し合った人は少ないだろう。後援会にでも入らない限り、そういう機会は殆んどないからだ。
 それにしても国民を侮った規制である。国民が簡単に買収されるという発想がそこにはある。もしそういう候補者がいたとすれば、必ず告発されることになるだろう。
 昔は、選挙になれば各政党が機関誌の号外を発行し、そこに候補者の名前や政策を自由に書くことが出来た。
 ところが今は、選挙になると各候補者のビラに名前を書いてはいけないことになっている。候補者の名前を知ってもらうために発行するビラに、名前を書くことを禁止するということほど、馬鹿げた規制はない。こんな規制は日本だけである。
 インターネットでの選挙運動も、アメリカ、イギリス、ドイツでは普通に行なわれているが、日本だけは厳しく規制されている。今の時代、インターネットは最大の情報伝達手段である。国民の選挙への関心を高めようとするなら、この手段を使わないということはあり得ない。
 馬鹿馬鹿しい規制は、まだまだある。当選後、有権者にお礼を言うことも禁止されている。「当選御礼」などという張り紙を出してはいけないのだ。事務所を訪問してきた人に、湯飲みでお茶を出すことは認められているが、缶に入ったものは駄目だそうだ。
 こんな些末な規制を知っている人は、殆んどいない。国民の関心を遠ざけようとしているとしか思えない。