本書で問いたいのは、それら自衛隊の活動領域の拡大ではない。そうではなくて、陸上自衛隊施設部隊(工兵部隊)の派遣を中心に活動が積み重ねられる中で生じてきた自衛隊の活動の質的変化についてである。すなわち、以下に集約される、より具体的な問いである。
「陸上自衛隊にとって、初の海外派遣任務だった1992年の国連カンボジア暫定統治機構(United Nations Transitional Authority in Cambodia: UNTAC)での活動と、2017年5月に派遣部隊が撤収した国連南スーダン共和国ミッション(United Nations Mission in the Republic of South Sudan: UNMISS)での活動とは、その活動内容にどのような違いがあるのか」
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本多 倫彬(ほんだ ともあき)
1981年生れ。慶應義塾大学経済学部を卒業。同大学院政策・メディア研究科博士課程修了、博士(政策・メディア)。日本学術振興会特別研究員などを経て、現在、キヤノングローバル戦略研究所研究員。秋野豊ユーラシア基金「第13回秋野豊賞」受賞。
論文・著書に、『世界に向けたオールジャパン―平和構築・人道支援・災害救援の新しいかたち』(上杉勇司・藤重博美・吉崎知典との共編著、内外出版、2016年)、「平和の破壊者から促進者へ―東ティモールにみる平和構築における新たな軍隊の姿」(山田満編『「人間の安全保障」に向けた東南アジアの現在と課題』明石書店、2016年)、「JICAの平和構築支援の史的展開(1999-2015)―日本流平和構築アプローチの形成」(『国際政治』第186号、2017年1月)などがある。