「日中問題」という「国内問題」

  著 者:丹羽 文生
  出版社:一藝社
  発売日:2018年2月6日
  定 価:本体7500円(税別)
  


《 推薦の言葉 》
 躍進著しい中国は、アジアのみならず、世界の「驚異の的」となっているが、その中国は今後も発展を続け、いずれアメリカを追い抜く国になるのであろうか。2017年秋に開かれた中国共産党の第19回大会を無事に通過した習近平の権力基盤は盤石のように見える。しかし、中国の内情は、極めて複雑である。
 中国は早くも2049年の建国100年を祝すため、国家的大事業を計画していると言われている。さらに、それまでに台湾統一の実現を目指すとの見方もある。
 戦後日本外交は、日米関係と日中関係の中で進展してきた。そのうち、日中関係(日台関係を含む)は今日、そして将来に亘る日本の進路を決める重大事である。私たちは将来を展望する時、少なくとも、その10倍に及ぶ期間を対象として過去の歴史を振り返らねばならない。そこから得る教訓を今後の日中関係に、どのように生かしていくべきか。このことは現代を生きる私たちの仕事であり、それを後世に引き継ぐ大きな責任を有している。
 本書は、新進気鋭の政治学者である丹羽文生君の日中国交正常化という戦後日本外交史の中でも最も難儀な外交課題を「国内問題」として捉え、その政治過程を学術的に検証した大著である。彼は戦後の日中台関係史を論理的に解きほぐしながら隠された歴史を掘り起こし、それを数多くの外交資料によって見事に証明している。これこそ絶えざる学問的研鑽から生まれた所産である。
 本書を読んで深い感銘を覚えるのは、専門家として、その歴史的事実に真摯に向き合った丹羽君の態度である。彼の研究成果が今後の日中台関係を模索する重要な指針となることを衷心より期待するところである。

拓殖大学総長
元防衛大臣
 森本 敏