本書は、中国が情報の役割と将来戦をどのように構想しているのかを明確にするために人民解放軍の文書を含む様々な中国の文献を調査し、中国の空母、ミサイル及び航空機等の増強に目を奪われるだけではなく、中国の安全保障において増大しつつある情報(サイバーだけではなく)の役割に関する中国の軍と指導層の深い考えを理解することが重要であると強調しています。孫子が「敵を知り、己を知れば百選殆からず。彼を知らず、己を知れば、一勝一敗す。彼を知らず、己を知らざれば、戦うごとに必ず殆し」と述べているように、中国は古来から情報戦の重要性を熟知しています。現代においては特に高価な物理的戦争に訴えるよりも、中国は得意の情報戦を駆使して所望の目的を達成しようとしているように思います。換言すれば、中国が平時、戦時に仕掛けてくる情報戦は、我が国にとって、空母、原潜以上に深刻な脅威と言っても過言ではないと思います。
日本としても、あらゆるレベルで情報戦に対抗し、さらに独自の情報戦を展開する能力は、伝統的な軍事的安全保障だけではなく、経済安全保障と将来の統合的国力の発展に必要不可欠なものであると思料致します。
元海上幕僚長
福地建夫
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