「私は中国に戻れば、間違いなくすぐ拘束されます。故郷にいる家族に連絡もできません。日本以外に行くところはありません」。
中国政府によるジェノサイド(民族の破壊)が進む東トルキスタン(「新疆ウイグル自治区」)
絶望的状況を伝えるべく来日したウイグル人研究者によるウイグルの「独立国」としての歴史、現状、そして未来への考察。
本書解説より 饗場和彦(徳島大学総合科学部・教授=政治学・国際関係論)
ウイグル人の長い歴史と固有の文化、国際法の民族自決権、人権保障の普遍原則からして、今、中国内でウイグル人が置かれている状況は明白に不当である。他方、中国側にある、華夷秩序による固有の世界観と、欧米列強による屈辱の記憶、国益を最優先する統治心理などは、政治・国際関係をリアリズムでみるとき、ある種、当然ともいえ、その点で中国のウイグル人の状況に諦観を禁じ得ない。とはいっても、このシニシズムも「程度問題」という反論からは免れない。ウイグル人の実態がもはやジェノサイドに当たる可能性がある以上、甘受できる「程度」は超しているだろう。日本をはじめ国際社会としてウイグル人と連帯して問題解決に当たらねばならない必要性は、本書の読了後、いっそう得心できるはずである。