本誌が読者に届く頃、朝鮮半島情勢がどうなっているかは、北朝鮮・朝鮮労働党の金正恩委員長が核・ミサイル開発を放棄するか否かにかかっている。しかし、金氏に放棄の意志は全くない。金氏が核・ミサイル放棄を実行しない限り、筆者は朝鮮戦争再開は不可避だと、2016年晩秋から主張し続けてきた。
折しも、韓国を訪問した米国のドナルド・トランプ大統領は2017年11月7日、在韓米軍基地を訪問し、在韓米軍司令官のヴィンセント・ブルックス陸軍大将のブリーフィングを受けたが、日韓軍事筋は筆者に「軍事オプションの説明だった」と明かした。2,000名もの在沖縄海兵隊員も既に韓国に展開済みで、朝鮮半島情勢は刻々とキナ臭くなっている。
北朝鮮を事実上の核保有国と認め始めた文在寅政権
ただ、朝鮮半島をキナ臭くしている元凶は金正恩委員長だけではない。2017年11月7日の米韓首脳共同記者会見で、トランプ大統領が「アメリカは必要なら、比類なき軍事力を行使する」と述べたのとは対照的に、韓国の文在寅大統領は平和的な解決を目指す姿勢ですかさず〝反論〟した。北朝鮮に対して、安倍晋三首相とともに軍事攻撃も除外せず「圧力」を強め続けるトランプ大統領と、共同会見で「対話」を連発した文大統領との戦略レベルの認識ギャップは繕っても繕いきれないほど大きい。否。認識ギャップなどではない。北朝鮮への「圧力」は口先だけで、文大統領が求め続けている「対話」も擬態に過ぎない。
それどころか、韓国軍が朝鮮戦争再開後、南北軍事境界線(38度線)を越境し、北朝鮮側になだれ込む確度は高くはない。
兆しはいくらでもある。
文在寅大統領は2017年11月1日、国会の施政演説で断言した。
「朝鮮半島で、韓国の事前同意のない軍事的行動はあり得ない」
文大統領は、韓国が「日本の〝植民地支配〟より解放された記念日」と自称する2017年8月15日の《光復節》式典でも、同種の挨拶をしている。
「韓(朝鮮)半島での軍事行動を決定できるのは大韓民国だけであり、誰も大韓民国の同意なしに軍事行動を決めることはできない」
発言を〝単品〟で採り上げると、「国家主権を堅守する覚悟を表明した」との解釈も成り立つが、セットで見つめ直すとそんな崇高な精神は雲散霧消する。
文大統領の言動は朝鮮戦争再開を引き寄せている。筆者は、朝鮮戦争再開を引き寄せた韓国の文政権が、米軍の作戦行動を妨害する挙に出る利敵行為を懸念する。
2017年6月の米韓首脳会談直前だけ切り取って分析しても、妨害工作の芽は如実に現れている。