中国海軍の能力と活動

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防衛省防衛研究所主任研究官 下平拓哉

はじめに
 近年、海洋への進出が著しい中国海軍の実力とは一体どの程度のものであろうか。かつて海軍国と呼ばれた日本や英国、ドイツ、そして現在の米国は、世界の海を席捲したが、中国海軍がこれらの海軍国のような成果を成し遂げられないと考えるのは軽率であると米海軍大学のホームズ(James R. Holmes)教授らは警鐘を鳴らしている。
 特に、中国海軍水上艦艇の能力は急速な向上を遂げている。国産空母の建造を進め、高性能なイージス駆逐艦や原子力潜水艦などを整備し、米海軍に迫る中国海軍の能力は、インド太平洋地域における存在感を確実に高めてきている。米海軍分析センター(Center for Naval Analyses: CNA)のマクデビッド(Michael McDevitt)は、中国海軍は世界最大規模で世界第2 の外洋型海軍になると分析している。
 本稿の目的は、中国海軍の能力はどの程度なのかを明らかにすることにある。そのために、まず、中国海軍の戦略を踏まえた上で、次に水上艦部隊、水陸両用戦部隊、潜水艦部隊等の特徴的な能力について整理し、中国海軍の近年の特徴的な活動について分析する。

1 中国海軍戦略
 2017年6月20日、中国国家発展改革委員会と国家海洋局は「『一帯一路』建設海上協力構想」を発表し、「21世紀海上シルクロード」の沿岸国に向けて次のような提案を発した。「ブルースペースの共有とブルー経済の発展を主軸に、海洋生態環境の保護、海上での互恵・相互接続の実現、海洋経済の発展の促進、海上の安全維持、海洋科学研究の深化、文化交流の展開、海洋ガバナンスへの共同参与などを重点として、グリーン発展の道を共に歩み、海を拠り所とする繁栄の道を共に創り出し、安全保障の道を共に築き、知恵と革新の道を共に建設して、協力・ガバナンスの道を共に図ることで、人と海の調和のとれた共同発展を実現させる。」つまり、中国は自らが発展するために海の共有を推し進めようとしており、その手段が「共に」である。これは米国がこれまで採用してきた関与戦略を想起させるものである。
 「21世紀海上シルクロード」について、国際海洋安全保障センター(Center for International Maritime Security)は、次の3つの傾向があると分析している。第1に、中国企業によるインフラ整備。第2に、商船の増大。そして、第3に海軍力の展開である。これは、正にマハン(Alfred Thayer Mahan)が定義する、海洋活動を行う商船隊、 それを守る海軍、そしてそれらの活動を支える拠点として必要な海外基地や植民地からなる「シーパワー(海上権力)」そのものである。