対中国対決姿勢を明確にした米国
米国上院は8月1日、2019年度(18年10月~19年9月)国防予算の大枠を定める国防権限法案を可決した。予算総額は、アフガニスタンなどでの戦費を含め約7,160億ドル(約79兆円)という最大規模となった。
国防権限法で特に目を引くのは、中国への強硬姿勢である。南シナ海での軍事活動の拡大を懸念すると共に、米国のハイテク技術窃取行為に対する警戒心を顕わにした。また米国の技術の輸出規制見直しについても言及している。
米政府機関が中国の通信大手「中興通訊(ZTE)」と「華為技術(ファーウエイ)」の利用を禁ずると共に、中国が南シナ海の軍事拠点化を中止するまで、中国の環太平洋合同演習(リムパック)参加を禁止した。また台湾の防衛能力向上支援などが明記されたのも特徴的だ。
今年1月19日に公表した2018年国家防衛戦略(NDS)では、中国とロシアの「軍備増強と急速な科学技術の発展」を警戒し、「米国の優位が脅かされている」との認識を明らかにした。「米国の繁栄と安全保障を巡る最重要課題は、長期的かつ戦略的な競争の再出現」と位置付け、「米軍即応力強化、核、宇宙・サイバーを中心に軍事力の近代化と増強」の必要性を強調した。今回の国防権限法には、この危機感が反映されている。
国防権限法では、中国について「自国に有利なようにインド・太平洋地域の秩序を塗り替えるため、軍の近代化や情報作戦、略奪的な経済政策を通して近隣諸国を抑圧している」と強い警戒心を示した。中国の南シナ海軍事拠点化を念頭に、国防長官に対し、「インド太平洋地域の安定化」に向けた軍備拡充5ヵ年計画の提出を義務付けたことも特徴的である。
約79兆円という空前絶後の国防予算ではあるが、国内で強い反発の声は聞かれない。中国やロシアとの競争に一段と力を入れる必要があるとの認識は、超党派的コンセンサスを得ているようだ。
8月16日に米国防総省が発表した中国の軍事・安全保障に関する年次報告書でも、中国軍の量、質の両面での増強が進む状況を明らかにし、アジア太平洋における米軍の圧倒的優位が揺らぎつつある現実を浮き彫りにした。トランプ政権は、中国を長期的な最大の脅威と位置付け、本格的に力で対抗する構えである。
始まった米中貿易戦争
貿易面では米中間で既に貿易戦争が始まっている。トランプ大統領は4月3日、通商法301条を発動して約1,300品目、総額500億ドル(約5兆3,200億円)相当の中国製品に25%の追加関税を課す案を発表した。