中国の宇宙計画と特徴

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防衛省防衛研究所主任研究官 下平拓哉

はじめに
 2016年、中国は4月24日を「中国宇宙の日」と定めた。1970年4月24日、中国は初の人工衛星「東方紅(Dong Fang Hong)1 号」の打ち上げに成功する。日本が初の人工衛星「おおすみ」を打ち上げてから2ヵ月遅れで、中国は、ソ連、米国、フランス、日本に続く世界で5番目の衛星打ち上げ国となった。2018年4月末現在、世界の衛星運用数は、1,886基であり、中国は、250基と、米国の859基に次ぐ規模まで大きくなった。「中国宇宙の日」は、宇宙の夢を実現することにより中国の新時代を築く一つのメルクマールとなっている。
 現在、米国、ロシア、日本、カナダ等が共同運用している国際宇宙ステーション(International Space Station: ISS)は、2024年までの運用継続方針が示されているものの、その後の運用費用の目途はまだ立っていない。2025年以降は、2016年に中国が打ち上げた「天宮(Tiangong)2号」や2019年に打ち上げ予定の「天和(Tianhe)1 号」といった中国の宇宙ステーションだけとなる可能性も指摘されている。今後、中国が、宇宙分野において大きな位置を占めることは間違いない。
 宇宙空間は、宇宙の平和利用原則を謳った1967年の宇宙条約の精神を脅かすような様相も呈してきている。習近平国家主席は、就任以来、人民解放軍のトランスフォーメーションを着実に進めている。2015年末から2016年にかけて、統合作戦機能を高めるために、7個大軍区を5個戦区へ再編するとともに、陸軍指導機構、戦略ロケット軍、そして、戦略支援部隊を新たに創設した。ヘリテージ財団アジア研究センターシニア・フェローのチャン(Dean Cheng)によれば、最も注目すべきは戦略支援部隊であるとし、将来戦を戦い、勝利するためには「情報支配(information dominance)」が死活的に重要であると分析している。また、ジュネーブ安全保障政策センターのファネル(James E. Fanell)によれば、戦略支援部隊は、人民解放軍の作戦に寄与する正確な状況認識、目標の識別、ネットワーク、そしてリアルタイムの指揮統制を提供できるようになると分析している。
 今後の戦略支援部隊の動向は見逃せない。戦略支援部隊は、宇宙戦、サイバー戦、電子戦等を担当している。本稿では、中国の宇宙計画とその特徴について分析する。

1 宇宙計画の方向性
 2017年10月18日、中国共産党第19回全国代表大会において、習近平総書記は、新時代における軍の強化を目標に掲げ、人民解放軍を「世界一流の軍隊」にすると明言した。