外国人就労問題について

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公益財団法人国際人材育成機構会長 栁澤共榮

 我が国は長期的人口減少過程に入っており、国立社会保障・人口問題研究所の推計(2017年)によれば、日本の総人口は平成27(2015) 年の1億2,709万人から、平成65(2053) 年には1億人を割って9,924万人となり、平成77(2065)年には8,808万人になる。生産年齢人口(15~64歳)に至っては、平成27(2015) 年の7,728万人から、平成77(2065)年には4,529万人にまで減少するものと見られている。

特定技能制度の問題点
 このような環境下、人手不足対応として今回導入される見込みである新しい在留資格制度(「特定技能制度」)は、実質的には移民政策の導入であるにも拘わらず、国民による十分な議論がなされておらず、外国人労働者の受入体制も不十分で、社会の分断・混乱・治安悪化につながる可能性があり、次の6つの問題があると考える。
 まず、特定技能2号で認められる家族の帯同については、日本語の習得教育や、住居、教育、社会福祉その他行政サービスを提供する等生活環境整備がなされていない。また、医療保険等の不適切使用の防止策は検討されているが、社会保障費増加への対応等社会資本の環境整備もなされてない。
 次に、人材不足が深刻な分野の就労は、単純労働に従事することが多いと思われるが、結果として職業の棲み分けや、社会的階層分化が起こる可能性が高い。不況時に労働力が過剰となった場合には、外国人就労者の働き口がなくなり社会的不安が高まり、結果として犯罪が増加し治安悪化につながる恐れがある。こうした事態に対する対応策が講じられていないことによって、世界で一番治安が良いと言われている日本で、欧米諸国と同じように犯罪が多発しかねない。
 3つ目として、日本人と同等以上の報酬を確保することも挙げられているが、同様な原則を含んだ「外国人一般雇用許可制」(詳細後述)を導入した韓国では、自国民と外国人との賃金格差が生じているだけでなく、自国民の雇用待遇改善に優先的に努めるべきという声も上がっており、我が国でも同様な議論が生じる可能性がある。
 在留管理の点でも、許可された活動の範囲内とはいえ転職を認めると、適正な管理が困難となり、受入れ機関による外国人材に対する適切な支援の実効性が担保されなくなる。
 既存制度との整合性も問題である。現在、外国人の就労形態としては、留学生の資格外活動や外国人技能実習制度があるが、留学生の制限時間を超えた資格外活動や、技能実習制度における産業現場の実態に合わない職種限定等の課題解決も図られていない。