はじめに
2015年12月31日、北京において、中国人民解放軍の陸軍司令部、ロケット軍、戦略支援部隊の創設大会が盛大に行われた。
特に新設された戦略支援部隊について、習近平国家主席は、「戦略支援部隊は国家の安全を守る新型の作戦勢力であり、わが軍の質的に新しい作戦能力において重要な成長点」と強調した。
2015年5月26日に中国国務院新聞弁公室が発表した『2015年国防白書』によれば、新たな情勢下における積極防御軍事戦略の方針の下、軍事闘争準備の重点を情報化局地戦争に勝利することにおいた。中国軍事科学院が編纂した『戦略学(2013年版)』によれば、情報化戦争とは、軍事力による作戦体系だけではなく、政治、経済、法律、世論等を含む戦争体系を含んだ、全ての要素と全ての体系からなる体系の対抗であり、戦争の勝敗は、システム機能の高低で決まると説明されている。
創設間もない戦略支援部隊については未だ不明なことが多い中で、戦略支援部隊に関する先行研究としては、米国のシンクタンクであるランド研究所(RAND Corporation)の研究と米国防大学国家戦略研究所(Institute for National Strategic Studies: INSS)による研究が秀逸である。特に、ランド研究所によれば、情報化局地戦争に勝利するための統合作戦能力を向上させる上で、戦略支援部隊は中心的な役割を果たすと分析している。
米国土安全保障省の戦略政策計画部長であり、戦略支援部隊研究の第一人者であるコステロ(John Costello)によれば、戦略支援部隊の創設は、中国人民解放軍の変曲点となるとその重要性を指摘している。本稿では、中国人民解放軍戦略支援部隊の特徴と課題等について分析する。
1戦略支援部隊の組織と任務
新設された戦略支援部隊は、参謀部、装備部、政治工作部、後勤部の伝統的な4つの部から構成されている。またこの4部と並行して、宇宙を担当する航天系統部と情報戦を担当する網絡系統部が編制されている。戦略支援部隊の指揮系統は、依然不透明なところが多いが、中央軍事委員会と戦区指揮官からの2 重指揮問題がある。これは、2015年以降の中国人民解放軍の機構改革によって、これまでの4総部(総参謀部、総政治部、総後勤部、総装備部)を解体し、それぞれの機能を15の部門に再編して中央軍事委員会に組み込んだことにより、中央軍事委員会の軍に対する統制力は強化されたが、中央軍事委員会から各軍種への管理命令と中央軍事委員会から5つの戦区への統合作戦指揮の問題がある。
「軍委管総、戦区主戦、軍種主建」と言われるように、中央軍事委員会が主導し、戦区が戦い、各軍種が部隊を作り上げる。