歴史認識と日本民族の命運

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政策提言委員・高知大学名誉教授 福地 惇

Ⅰ「欺瞞の世界史」が国際社会を覆う
 筆者が本講座で一貫して追求してきた主題は、近現代日本のそして人類世界の命運は何であるかという設問への探求である。
 諸国民や諸社会のそれぞれに宇宙・地球・人間・自然界等への見方の相違がある。
それら観念の在り方の相違でこの世には争いごとが絶えないのである。宇宙規模で見れば、地球はわれら人類の運命共同体である。しかし、地球上の現実において人類は五大陸や多数の島嶼に広く分布するので地政学的位置、気候風土、人種や宗教や積み重ねた歴史をそれぞれ異にするから、歴史的な系譜やその他で纏まりのある国家はそれ自体が「運命共同体」であるから、その存亡を賭けた紛争や戦争は絶えず何処かで発生してきた。しかも、人類文明の進運に伴い抗争や紛争や戦争は威力も規模も大いに拡大してきた。
 西暦紀元15、16世紀以降に欧米世界に合理主義が普及するに伴い機械文明、産業文明、世界規模の金融ネットワークや交通手段や軍事の急速な発展があった。
特に18、19世紀に勢力圏の拡大闘争が欧米方面で活発化して所謂「帝国主義の時代」「植民地主義」の時代が到来した。
欧米世界には、この勢いを巧妙に活用して、「自分たちだけによる自分たちの為の世界征服」を秘かに企む特異な勢力が存在し、「彼ら」は欧米列強の各内部や植民地主要部にネッツワークを張り巡らせて、じわじわと成長した。
 19世紀に「彼ら」が拡散した新思想は、自由・平等・博愛で、それは自由主義と共産主義、社会主義だった。20世紀末葉から「彼ら」が大活用する主義は「新自由主義」、一名「グローバリズム」である。国際社会全体をこの主義に染め上げて、次には「NWO(新世界秩序)」なる世界一極支配へ大前進して、世界を3つか4つの大な「勢力圏(連邦体)」にまとめて、最高指導部がそれらを統括する可能性は高まっている。このことは、ジョージ・オーウェルが有名な著書『1984年』(1949年刊行)に書いた「三つの超大国」(早川書房の邦訳旧版の236~258頁の記述)を彷彿とさせる話である。だが、これはオーウェルの予言ではなく、「彼ら」の長期計画を作家に空想物語の風を装わせて予め公表させたものと見るべきであろう。
 この勢力は至極怜悧・狡猾であって、敬天一神教(ユダヤ教)なる特異な宗教を信条としている。彼らは神ヤーベから世界支配を命じられた選民だと信じる。
「彼ら」はこの宗教信条から、信仰する神の命に忠実に、「彼らによる彼らだけの為の世界一極支配」、別名「NWO」構築を大目標として世界改造を気長に巧妙に推進して来た。「彼ら」は今や「影の世界支配権力」ともいうべき存在である。