我が国に対するインテリジェンス活動にどう対応するのか

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政策提言委員・元公安調査庁金沢事務所長 藤谷昌敏

 第2章では、インテリジェンスの分類について、大きく分けて「情報収集活動」「秘密工作」「防諜活動」の3分野に分けることができると述べた。
 「情報収集活動」の対象となる情報は、外交、軍事、政治。経済、社会、科学技術など多岐に亘っており、特に外交と軍事は密接不可分の関係にある。「秘密工作」は、宣伝工作、暗殺、ハニートラップ、政治工作、テロ支援などに分けられ、米国、ロシア、中国などが活発な活動を行っている。「防諜活動」は、機密を守るための防御的CIと機密を盗もうとする組織に対応する攻撃的CIに分けられ、警察もしくは防諜機関がその任務を担っている。次に20世紀に入り、情報機関が肥大化し複雑化した原因は、インテリジェンスの目的や内容が大きく変化したことである。
 その理由は第1に「国際社会の多様化に伴う情報対象の拡大」、第2に「情報収集手段・方法の複雑化・専門化」、第3に「サイバー空間の出現」である。
 今回の第3章では、北朝鮮、中国、ロシアの情報機関・防諜機関の紹介、その組織の成り立ち、最近の活動について考察する。

第3章 北朝鮮・中国・ロシアのインテリジェンス
 地政学的に中国、ロシアという強国に囲まれた日本にとって、朝鮮半島の支配権は国家存立の根本であった。一方、中国、ロシアにとって、いち早く西洋化を進めて一大強国となった日本は安全保障上、重大な脅威となっていた。そのため、朝鮮半島の支配権を巡って、日本、中国、ロシアの間で日清・日露戦争が惹起したことは歴史の必然であった。いずれも近代的軍隊を持った日本が勝利したが、皮肉にもこの勝利が中国、ロシア国内の共産主義勢力の拡大を助けることになった。情報機関による水面下の戦いは、1922年のソビエト社会主義共和国連邦の建国、1945年の日本の敗戦、1948年の朝鮮民主主義人民共和国の建国、1949年の中華人民共和国の建国を経て、一層、組織的になり強大化し先鋭化していった。
 戦後の北朝鮮、中国、ロシアの深謀遠慮は、日本を包囲して封じ込め、米国と離反させて無力化することである。これら3国の情報機関は、日本の政治・経済・社会など各方面で弱体化工作を展開したのである。例えば、政治家やマスコミを使って反日的な世論操作を行ったり、共産主義者を支援して学生運動を活発化させ、日本社会を混乱に陥れた。また、日本人に成りすまして世界各国で工作活動を行い、大韓航空機爆破事件などのテロ活動を行った。