平成を総括する

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会長・政治評論家 屋山太郎

はじめに
 5月1日より、元号が改まり「令和」の時代へと幕が上がります。改めて「平成」の30年余を振り返ってみると、この時代は「やるべきことを何もしなかった時代」という印象が残ります。
 安倍晋三首相は、安保法制を作った。あとは憲法改正をすれば、大規模な改革を実現できるはずですが、今はそれも危ないのではないかと考えています。しかし、憲法改正をしなければ、衆参両院で与党が持っている3分の2の議席は意味がありません。憲法改正ができなければ、憲法改正反対という人達が勝ってしまうことになる。そういう状況なら、解散した方が良い。国民が憲法改正を望んでいるのかいないのかをはっきりとさせた方が良いと思います。
 ポスト安倍は菅義偉官房長官が引き継ぎ、その後にまた安倍晋三氏に戻すというロシアのプーチン大統領のようなことを言う人がいますが、なかなかそう上手くはいかないでしょう。解散総選挙で負けた場合の安倍首相の進退は別として、解散総選挙をして勝負をしないといけない。安倍首相が国民に問うことが大事だというのが私の考えです。
 私は、政治記者を50年やってきました。その間、いくつか長期政権がありました。例えば、池田勇人首相(1899-1965年)は、1960(昭和35)年から1964(昭和39)年の4年間内閣を率い、佐藤栄作首相(1901-1975年)は1964(昭和39)年から1972(昭和47)年まで、7年半首相の地位にありました。
 今から振り返ると、昔は官僚政治の時代だったと思います。官僚が仕事を持ってきて、それを首相が受け入れる。あらゆる制度といってもいいくらい首相と官僚の狎れ合いがありました。その時私がスクープを取る為に何をやったかというと、役所の書類を取ってくる、ただそれだけでした。
 今は官僚政治から脱却しているので、そういうことはありません。政治家が自分の知恵を絞りこういうことをやったらどうかと提案し、首相がそれを実行に移す。官僚の知恵も上手く使っているから有効に作用します。村山内閣や民主党内閣が失敗したのは、官僚の言うことを聞くことは官僚主導の政治になってしまうからよくないと考えていたからです。官僚が知恵を出すのは当たり前で、それを政治家が上手く纏めてこそ実現するということを理解していなかったからでしょう。
 一方、政党はこれまで考えていた通りにはなっていません。現在は自民党という大きな政党が1つだけで、他は小さな政党ばかり。