国際社会の劇的変化に対応せよ

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会長・政治評論家 屋山太郎

はじめに
 令和という時代は漢字の穏やかさとは裏腹にとてつもない戦争が起こる時代かも知れない。米国にトランプ大統領が誕生し、反撃する中国が世界を制覇するかも知れない現実を目前に見たからだ。トランプ氏は口を開けば「アメリカ第一」を繰り返すが現実の米中の軍事、経済情勢を見て、中国に「第一」を持って行かれる恐れを感じているに違いない。

中国のWTO加盟を許し育てた米国
 歴代アメリカ大統領は未来ある息子を育てるように、中国を扱ってきた。自由主義陣営の最大の誤りは2001年に中国を世界貿易機関(WTO)に加盟させたことだろう。WTOというのは自由経済を公正、公平に守るために作られた国際機関である。そこに中国を招き入れた思惑は、自由経済の規則の中で動いているうちにその効率に気付いて、中国自身が自由主義国に転身するのではないかと期待したからである。
 ベトナムもWTOに入っているが、国内の共産党政府が所有する国営企業の扱いが極めて難しい。 
 ベトナムの場合、企業規模が小さいから国の資金を補助しても、被害を受ける国があっても許容範囲にとどまる。中国は企業が左巻きになると政府補助金をドサッと注ぎ込んで助ける。これでは競争していた私企業はたまらない。実はこういう“不公平” は中国がWTOに入ってから何回も起こっていたのだが、皆が皆、寛容に見逃してきた。米国が強い推薦者なのだから、いちいち文句を言うのが憚かられた。皆が黙っている中で中国は共産党を強くして、国家管理を厳しくし、技術力を磨きに磨いてきた。

機密情報「盗み放題」の中国
 10年ほど前に日本の新聞の社会面トップを飾った記事だが、日本電気がトップ・シークレットの製造法を中国人社員に盗まれた。「まだ自宅のPCにデータが残したままだ」という言い分を信じて2人の日本人同僚が同行して自宅まで行ったという。しかし実際には本国に送信済みだったのだろう。目の前のPCはハンマーで打ち砕かれていたという。
 これはほんの小さな一例で、最近では米空軍の最新鋭機ステルスF35Bは既に中国で生産されたという。
 軍事機械や兵器のコピーは一瞬で行われる。米国は民間企業、研究所、官庁の研究所にほぼ偏見なく中国人を招き入れている。その何万人かが日本電気がやられたようなことをやれば、まるっきり機密など守ることはできない。
 さながら中国が影の主人公で、全世界の研究者を使って科学技術を開発しているようなものだ。