「令和」の御代に期待を込めて

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顧問・元陸上幕僚長 岩田清文

 戦後74年が過ぎた。
 国内外の環境の変化に対応して様々な事が大きく進化して来た一方で、この永い期間、「昭和」そして「平成」の御代を経ても、全く変わらなかったこと、変えられなかったことも多くある。

憲法を頂点とした基本的枠組み
 安倍晋三総理は第1次安倍内閣において、「戦後レジームからの脱却」という言葉を掲げ、様々な戦後の呪縛から日本を解き放とうと努力された。
 第2次安倍内閣においては、この言葉は封印されたものの、改革の方向性は変わっていないと認識している。事実、平和安全法制の成立などは安全保障の分野において実態的に大きく改善された。正に、第166回国会(2007年)における安倍内閣総理大臣施政方針演説に述べられた、「憲法を頂点とした、行政システム、教育、経済、雇用、国と地方の関係、外交・安全保障などの基本的枠組みの多くが、21世紀の時代の大きな変化についていけなくなっていることは、もはや明らかです。(中略)今こそ、これらの戦後レジームを、原点に遡って大胆に見直し、新たな船出をすべきときが来ています。」との精神は今も総理の強い意志として内燃して来た結果であると信じている。
 しかしながらこの中で述べられた、頂点としての憲法問題は、未だ憲法審査会の場においてすら議論できていないのが現状である。
 最近の総理の発言からは、この憲法改正に向けた強い意志が伝わってくるが、是非とも、戦後三代の御代替わりを経たこの令和の時代、安倍総理在任中においてこそ、この歴史的な憲法改正を実現してもらいたいと強く願っているし、そうならなければ、また数十年同じ状況が続くのでは、との憂いが湧いてくる。
 私は憲法上曖昧な組織として位置付けられている自衛隊に、37年間奉職した。現役中は、政治に対する軍事の中立性保持が民主主義国家における軍事組織として極めて重要な事と認識し、政治的な発言を要職にある時は勿論、一自衛官としても封印してきたところであるが、退官後においては、ある程度は許されるものと考え、期待を込めて思いを綴りたい。

変わらなかったこと
 そもそも憲法は国の形を定めるものであり、国内だけでなく、国際社会に対しても日本の生き方を示すものだと思う。それほど重要なものであるにも拘わらず、「国の基本的枠組みの頂点」に位置する重要な定めがどうあるべきかについて広く国民が議論してきたとは言えない。