中国ウイルスの国際拡散と日本の異端

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顧問・麗澤大学特別教授 古森義久

中国からのウイルス来襲
 2020年は全世界が中国で発生した新型コロナウイルスに襲われた年として近代史に特筆されるだろう。人類の歴史でも珍しい邪悪で危険なウイルスの大感染だった。
 各国にとっては、そもそも自国内部には存在しなかったウイルスが中国から人間の体内に入って運ばれてきた。そして恐ろしい勢いで国内の住民に襲いかかったのだ。
 日本でも衝撃的な数の国民が感染して、倒れ、命を失った。国家や社会が傷つき、悲惨な被害を受け、機能を麻痺させられた。国の危機でもあった。
 6月上旬の現時点で感染のかなりの低下こそ見られるが、危機は決して終わってはいない。東京都などでは再拡大の兆しさえある。
 日本ではこの時点までにコロナウイルスの感染者は1万7千人を越えた。死者は約900人である。感染者数では全世界で44位であり、日本よりはるかに悲惨な被害を受けた国は数多い。
 だが日本は国際的な感染拡大の初期には感染者数が中国に次ぐ世界第2位という苦境に追い込まれた。戦争や他国による占領に比べてもおかしくない大打撃を受けたのだ。万が一にも大量破壊の細菌兵器による攻撃というのがあれば、こんなむごたらしい惨禍が起きるのだろうと想像させられるほどだった。とにかく日本という国家が正常な機能を殆ど停止させられるという状況までいったのだ。
 そこで当然、いくつかの疑問が起きる。
 日本はなぜこんな目に遭わされたのか。なぜこんな危機が起きたのか。そして日本の国家や国民の対応は適切だったのか。防げる方法はあったのか。さらには日本の対応が国際的に見てどうだったのか。この悲惨な体験から何を学ぶべきなのか。
 こうした諸点への解答の探索は今後日本が正常に戻れば戻るほど、必須となるだろう。これほどの悲惨で苦痛な事態を二度と起こしてはならないからである。
 ではそんな再発を防ぐにはどうすればよいのか。その答えの模索が以上に挙げたいくつかの疑問の探究なのである。
 本稿ではこうした諸点を論考したい。つまり日本のコロナウイルス感染への対応についての考察である。その考察には国際的な視点をも含めてみたい。
 
なぜ感染したのか
 日本側の一部では、世界の他の諸国よりはずっと被害が少なかったから、日本の対応は正しかったのだ、とする主張がある。この主張からは日本の反省や自省という発想が生まれにくい。日本はこれでよかったのだという安易な総括へと走りがちだからだ。