所謂、「慰安婦問題」が「歴史戦」まで発展した2014年、極めて大きな情報戦の一角だと見据える人が増えた。慰安婦問題を必死に煽っている組織や人物を調べると、その裏に北朝鮮、中国などの反日勢力の思惑が顕在化した。大学教授や政治家などに成り済ましている、それら北朝鮮、中国などの工作員の仮面を剥いでくれたことにある程度の感謝の気持ちさえある。慰安婦問題のおかげで、共産主義者の真実に対するアレルギーを改めて確認でき、現在の極左のネットワークがさらに知られることとなったと言えよう。
しかし、「慰安婦問題」が全くの捏造であり、韓国発の神話の崩壊が見えてきたにも拘わらず、韓国の主張する、「歴史」認識を再確認しようとする人が少ないような気がする。慰安婦問題が確かに捏造であり、極左の大学教授や政治家などの主張が実際の歴史とかけ離れていることは、秦郁彦著『慰安婦と戦場の性』(新潮選書、1999年)を読めばすぐに理解できるが、そこから自然に芽生える懐疑心を、韓国の主張する他の「歴史問題」に適用しなかったことが問題をより大きくし、長引かせている要因と言えるのではないか。「慰安婦問題」だけが、日韓中米の左翼が作り出した唯一の「歴史」の御伽話ではないのだから。
2019年、韓国の「歴史」を徹底的に疑って、ゼロから検証した本がやっと出版された。元ソウル大学経済学部教授と現在の李承晩学堂の校長李栄薫が編集し、日本でも大きな反響を呼んでいる『反日種族主義―日韓危機の根源―』(文芸春秋)は、一言で言えば、歴史に対する不誠実さに唖然とさせられる一冊である。
歴史の捏造に優れた工場、つまりアメリカのアカデミアで長年活躍して来た私は、そもそもフェーク・ヒストリーに敏感になっていると自負していた。アメリカの教授たちは、極左のイデオロギーだけが通じていてファクトは邪魔だと思っている人が殆どだが、李教授の本を読んでとにかく驚いた。韓国による「慰安婦問題」というでっち上げは、氷山の一角に過ぎず、米国のそれにも比較出来ないほど酷いことだと気付かせてくれた。韓国のアカデミアは、フェーク・ヒストリーの最先端を占領している。
『反日種族主義』は、日韓のみならず、この問題に敏感な国際社会の人々にとっての必読の書として強くお薦めしたい。
『反日種族主義』は、李教授他5名の研究者が韓国のそれぞれの「歴史」に真っ正面から立ち向かい、イデオロギー抜きの研究結果を発表している画期的な本である。容赦無く単刀直入に書かれているのがこの本のスタイルだ。