ポスト・コロナの国際関係を読む3つの座標軸

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顧問・元ベトナム・ベルギー国駐箚特命全権大使 坂場三男

 今、世界を暗雲が覆っている。20世紀における2つの世界大戦は人類にとって未曽有の災禍だったが、21世紀に入って20年近くが経過した現在、人類はその生存にすら関わりかねない新たな、そして巨大な脅威に直面しつつある。既に半年以上続いている新型コロナウイルスの猛威は地理的位置とその大小を問わずすべての国をパニックに陥れており、全く出口の見えない状況に追い込んでいる。地球環境の悪化も加速度的に進行しており、日々世界の出来事をニュースで追っていると、大洪水と旱魃が各地で起こり、大きな被害が出ていることに驚く。
 地球温暖化・気候変動はもはや回復不能な領域に入りつつあるのかも知れない。世界の政治・経済状況に目を転ずれば更に悲観的にならざるを得ない。
 米中2大国の対立は単なる貿易戦争の域を超えて今や「新冷戦」ともいうべき世界的な覇権争いに発展している。偶発的な軍事衝突が発生し「限定的な熱戦」になる可能性すらある。世界の国々が米中間で分断される事態は既に発生している。これがコロナ禍の影響もあって戦後最悪と言われる世界経済の悪化と直接に結びついて私たちの危機感を一層深めている。
 何とも気鬱な状況だが、こうした局面を打開する方策はあるのだろうか。私は本稿で現在及び近未来の国際関係の有り様を3つの座標軸で整理・分析し、解決策のあるべき方向を見極めたいと思う。悲観すべき材料は山ほどあるが、これを克服していかなければ人類に明るい未来はない。
 
グローバル化と反グローバル化の相克
 20世紀の後半から人類は交通・通信手段やIT技術の著しい発展によって歴史上かつてないグローバル化を経験してきた。パソコンやスマホの画面を見れば地球の最も遠隔の地にいる友人・知人とも瞬時に顔を見ながら話が出来る。1日か1日半があれば地球上の誰とでも物理的に対面することが可能である。まるで隣町に行くような気軽さで世界を旅し、人に会い、ビジネスをするグローバル化の世界。100年前の我々の祖先には想像すら出来なかった夢の世界が今そこにある。
 しかし、皮肉なことに、こうした画期的な技術の発展は私たちに真の幸福をもたらしているようには見えない。何故か。それはグローバル化がプラス面と共に多くの「負の側面」を持っているからだろう。そして近年はその「負の側面」が一段と鮮明になり、世界を混乱に陥れているように見える。
 グローバル化には必然的に貧富の格差を増幅させる作用があり、私たちを否応なく「弱肉強食の世界」に投げ込む。