北朝鮮問題で日本は国際社会をリードせよ

.

政策提言委員・龍谷大学教授 李 相哲

はじめに
 北朝鮮崩壊説は、今まで何度も浮上しては消えたりした。金日成主席が死亡した1994年や金正日朝鮮労働党総書記が死亡した後の数年間に、多くの専門家は北朝鮮の崩壊可能性に言及したが、結果的に金政権は崩壊せず、今なお健在だ。
 金正恩朝鮮労働党委員長が権力を受け継いでから早8年、後継者修行も充分に受けず、若くして権力を握ったため政権は盤石ではないと見られたが、現在のところ崩壊の兆候は見えない。
 その間、国際社会は北朝鮮を変えようと努力を続けた。94年に米朝は、北朝鮮に軽水炉2基を建設し、毎年50万トンの重油を提供することを条件に北朝鮮は核開発を凍結することに合意したが、2002年10月に北朝鮮が密かに核開発を続けた(ウラン濃縮技術を取得した)事実が発覚、「枠組み合意」は失敗だったことが判明した。
 その後も国際社会は外交努力を諦めることなく、2003年8月より北朝鮮の核開発問題を解決するための関係各国外交当局の局長級の担当者が直接協議を行う六者(アメリカ合衆国、韓国、北朝鮮、中国、ロシア、日本)協議を始め、2007年3月まで計9回も会合を開くが、結局、北朝鮮の核開発を阻止することはできなかった。
 トランプ米大統領は2018年、初の米朝首脳会談に臨む時、金正恩に会ったら3分で問題を片付けるだろうと豪語したが、その後、状況は全く変わっていない。
 何故、北朝鮮問題は一向に解決しないのか。何が問題だったのか。これまでの失敗から我々は何を学ぶべきか。
 
国連制裁決議は有効か
 国連制裁はあまり効かない。北朝鮮の態度を変えるにはやはり国家間外交しかないと主張する専門家は多い。
 これまで国連安全保障理事会は10回にわたり北朝鮮に対する制裁決議案を採択したが、トランプ政権時代に採択した決議以外は殆ど意味のないものだった。即ち、2016年までの制裁決議は効き目がなかった。原因は、大雑把に言えば、国連安保理常任理事国の中国とロシアの反対で、制裁は骨抜きになったからだ。
 2016年以前の国連制裁は北朝鮮の不法活動に対する制裁だった。北朝鮮の武器取引、麻薬や偽ドルの製造・販売のような活動を阻止するためのもので、厳しいといっても公海上で北朝鮮の同意を経ていれば貨物船を検問することができるくらいのものだった。そもそもこのような活動は北朝鮮が国際社会の監視の目を盗んで行われていたもので、制裁決議があるから効果を発揮するものでもなかった。