はじめに―バイデン政権への期待
2021年1月20日、ジョセフ・バイデンが米国新大統領に就任するとすれば、日本人の中にはそれを喜ぶ人とそうでない人が出て来るであろうが、中でも最も喜びを感じるのは菅政権と日本の多くの官僚達であろう。
それは何故か。バイデンが政権を取れば日本に対する圧力がなくなるからである。トランプ大統領の場合は、日本に何を要求してくるかが全く分からなかったが、それに比べるとバイデンは分かりやすく、彼は日本に対し何かを要求するということはないだろう。従って、菅首相も日本政府も、自分達が望む以上のことをする必要はないだろう。
日本は、米国と折衝する上で長年選択してきたアプローチを変えることが可能だ。つまり、しかめっ面をしたり、少々舌打ちしたりして、米国が何を求めて来ても「それは困難だ」と答えることも可能になるだろう。駐留経費の増額などの問題については、日本の「厳しい財政状況」を説明すればよい。これらは―トランプ大統領の出現までは―過去常に行われており、次の政権でも役に立つはずである。バイデン政権の関係者たちが時々不平を言ったとしても彼らが本気で日本に圧力をかけることはないだろう。彼らは、外交が分かっていない「取引中心」のドナルド・トランプのようなタイプの人間ではない。
確かに、バイデン政権の最初の仕事として、日本は、トランプ大統領が日本に不愉快な思いをさせて日米同盟を傷つけたことへの謝罪を期待しているかも知れないし、トランプ大統領が在日米軍駐留経費の負担増を要求したことを詫びたりする可能性もある。そうなれば日本も経費負担の軽減を難なく要求することが出来る。従って、日本は当面、新政権の対日政策が固まるまで暫く間静観し、自国の政策に集中するのが望ましい。
確かに「暫くの間」だけなのか。答えは「Yes」。恐らく3ヵ月から半年の間だろう。“賢明な”日本人はこのことを理解するとともに、容易にバイデンの大統領就任を喜んではいられない。
日本の課題
では問題は何なのか。それは“中国人民解放軍”である。中国は米国の影響力をアジアから追い出してこの地域の覇権を握ることに躍起になっている。そのために軍を強化し続けている。場合によっては、人民解放軍は米国に痛撃を与えることができ、南シナ海及び中国沿岸部付近で戦闘となった場合、大打撃を食らわせることとなる。従って、バイデンが大統領に就任して恐らく半年以内に、中国は米国に「ハッタリ」を言ってくるかも知れない。