はじめに
まず、本稿の主たるテーマである半導体とはどのようなものかを解説する。
《半導体とは、電気を良く通す金属などの「導体」と電気をほとんど通さないゴムなどの「絶縁体」との、中間の性質を持つシリコンなどの物質や材料のことである。ただし、このような半導体を材料に用いたトランジスタや集積回路(多数のトランジスタなどを作り込み配線接続した回路)も、慣用的に"半導体"と呼ばれている。半導体は情報の記憶、数値計算や論理演算などの知的な情報処理機能を持っており、電子機器や装置の頭脳部分として中心的役割を果たしている。
半導体製造装置とは、その名前の通り半導体(集積回路)を製造するために用いられる装置のことである。半導体製造装置にも実にさまざまな種類のものがある。たとえば各種の材料膜を形成する装置、写真蝕刻技術を利用して材料膜を形状加工する装置、微量不純物を添加する装置、組立て装置、検査装置などである。半導体を進歩させるためには、それを作る半導体製造装置の技術革新が必要不可欠なのである。(一般社団法人日本半導体製造装置協会H.P.より)》
もともと半導体は、1948年にベル研究所のウィリアム・ショックレーが接合型トランジスタを発明したことに端を発している。ショックレーは、その後も半導体の研究を続け、1956年にノーベル物理学賞を受賞した。米国に次いで日本も半導体開発に心血を注ぎ、1980年代には、日本は技術力だけでなく、売上高においてもアメリカを抜いて世界シェアの50%を超えるなど世界を席巻した。特にDRAM(Dynamic Random Access Memory)(ディーラム)は日本の得意分野で、廉価でもあったことから、米国に優越する国際競争力を有していた。それに対して米国は通商法301条に基づく提訴や反ダンピング訴訟などを起こして、「日本が半導体の分野で米国市場を脅かすことは、米国の先端技術産業だけではなく、安全保障上の脅威となる」などと日本の半導体産業政策を強く批判した。日米半導体協定による厳しい圧力は、日本の半導体産業を完全に衰退させた。その間に韓国サムソン電子は、日本企業を解雇された研究者・技術者を高額の給与で雇用して、大幅な技術革新を遂げた。現在もサムソン電子が世界トップクラスの座を確保しているのは、その際の技術流出の結果である。その後、中国も半導体製造に挑み、2020年上半期には、ファーウェイのハイシリコン社が中国企業として初めて世界のトップ10入りを果たすほどとなったが、中国は情報技術(IT)産業に欠かせない半導体を海外の製品や技術に大きく頼っているのが実情だ。