2021年春という時点での世界の激動と日本の立場を論考してみたい。
私自身は普段はアメリカの首都ワシントンに報道の拠点をおき、日本でも定期的に活動するジャーナリストである。だから世界を眺めるにもまず日本とアメリカからの視点が基礎となる。
この視点の据え方は決して不適切ではないと思う。日本の現状や針路を考える際に、まず日本として、或いは日本にとって、さらには日本から、という立脚の手順はごく自然だろう。
その上で日本にとっての最重要の同盟国アメリカから、或いはアメリカで、という考察となることも、理屈に適うと思う。何しろアメリカはなお超大国であり、その首都のワシントンは世界の政治の中心地的な機能を依然、果たしているのである。
そんな前提でいまの世界、さらにはこれからの世界を眺めると、主要な変動の要因としては少なくとも以下の3点が浮かびあがる。
・アメリカのバイデン新政権の動向
・新型コロナウイルスの影響
・中国の動向
以上の3つの国際潮流は勿論、相互に絡み合う。そしてそのいずれもが不可避的に日本にも直接の大きな波をぶつけてくる。日本の国運を左右し、将来の針路をも変えることにもなる。
本稿ではワシントンと東京を主要な観測拠点としてこの三動向を点検した上で、それらが日本をどう動かすことになるかを論じたい。
バイデン新政権の動向
日本が自国の国家安全保障を委ねる同盟国アメリカの新たな政権のあり方が日本に対していかに大きな影響を及ぼすかは説明の必要はないだろう。
バイデン新政権は日本に対して年来の日米安保条約に基づく日米同盟を堅持する方針は明示した。だが新政権の実態を多角的にみると、懸念や不安の材料はあまりに多い。
・大統領選挙での不正をなお主張するトランプ支持層からの攻勢
・連邦議会上下両院での共和党議員たちからの攻勢
・民主党内での左派の過激派からの激しい圧力
・内政の諸課題に追われての対外政策への国家資源の投入の不足
・ジョセフ・バイデン氏自身の現職大統領としての活動の能力への懸念
ざっと挙げても既に広範に指摘されるバイデン政権の不安定部分である。何しろバイデン政権は新型コロナウイルスの大感染とそれに付随するアメリカ経済大衰退という切迫した危機に直面してのスタートなのだ。