我が国の資本市場に法規制を!
中国軍拡への資金提供を防ぎ 投資家保護を進めよ

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政策提言委員・経済安全保障アナリスト 平井宏治

 アメリカ政府は、中国軍関連企業がアメリカの資本市場から資金調達を行うことを禁止する新たな規制を施行した。更に、アメリカの会計事務所による会計監査を受けない中国企業をアメリカの証券取引所から追放する規制も施行した。しかし、我が国や欧州では中国軍関連企業が資本市場から資金調達する行為を禁止する制度がない。
 本稿は、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき発令された「共産主義中国の軍事企業に資金を供給することとなる証券投資の脅威に対応するための大統領令」(EO13959号)及び「外国企業説明責任法」の概略を説明し、我が国もアメリカに倣った新たな規制導入の必要性について述べたい。
 
中国軍関連企業への資本提供を禁止
 2020年11月12日、トランプ大統領(当時)は、IEEPAに基づきEO13959号に署名した。IEEPAは、安全保障上の重大なリスクに対抗する措置を定めた法律である。安全保障・外交政策・経済に対する異例かつ重大な脅威に対し、非常事態宣言後、金融制裁を使い対処する。同法に定める対処内容の中に、通貨又は有価証券の輸出入規制・禁止がある。
 アメリカの国防総省は、2020年6月12日に、「共産主義中国の軍事企業」(表参照)を公表した。このリストに記載された「共産主義中国の軍事企業」とは、アメリカの国防総省が認定した中国共産党人民解放軍と関係が深いとされる中国企業を指す。
 このリストは3回更新され、本稿執筆時点(2021年3月3日)では、合計44社がリストアップされている。
 中国軍関連企業がアメリカの資本市場を使い資金調達を行うことについて簡単な例(図参照)を使い説明する。
 アメリカの証券取引所に中国軍関連企業X社が上場している。X社株式は上場しているので、アメリカの証券取引所を通じて自由に売買することができる。このため、X社は、エクイティファイナンスやデットファイナンスを行うことができる。
 エクイティファイナンスとは、企業が新株の発行や転換社債型新株予約権付社債などを発行して、貸借対照表の資本の部の増加をもたらす資金調達のことである。デットファイナンスとは、企業が銀行からの借入や普通社債の発行などを行い、貸借対照表の負債の部の増加をもたらす資金調達のことである。
 ここでは、X社がエクイティファイナンスの一手段である新株の発行をした場合で説明する。