米国主導のクアッド首脳会議が意味するもの

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マノハール・パリカル国防研究所東アジアセンターセンターコーディネーター兼リサーチフェロー ジャガンナート・パンダ

はじめに
 北京政府の修正主義によって表出した脅威のために、中国は依然として米国における超党派コンセンサスに基づいたバイデン新政権下での外交政策の重点課題である。バイデン大統領は既にインド太平洋地域での安全保障メカニズム、特に「日米豪印戦略対話(クアッド2.0)」への継続的な支持を表明しており、また米国の国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めるジェイク・サリバンも、クアッドは米国のインド太平洋政策の“基礎”であり続けると述べた。
 これらを更に推し進めるべく、バイデン大統領はクアッド首脳会議(QLS:Quad Leadership Summit)の開催を求めていると報じられている。これが実現すれば、クアッドで初めての首脳会合となり、現行の閣僚レベルからのアップグレードとなる。QLSの実現によって、インド太平洋地域におけるクアッドはどのような進展を見せるのであろうか。
 中国の出方やアジア地域の様々な地政学的傾向、クアッド各国と中国との経済関係といった要素も大いに影響し得るが、クアッドの将来性はやはり米国に依存するところが大きい。バイデン政権が発足して1ヵ月以上が経ち、中国とインド太平洋地域の現地情勢を見定める事に注力していたことも含めて、バイデン大統領の外交戦略はこれまで以上に注目され始めている。
 同政権の外交方針は、米国が「再び世界をリードする」という言葉に始まり、中国との競争においては「民主主義国との連合を強化する」ために米国の同盟国やパートナー国との関係を再構築するとしている。そして、バイデン大統領が検討している「民主主義グローバルサミット」の開催は、QLSとの相乗効果が期待できる上、今年のG7サミット議長国である英国が提案したように、韓国、インド、豪州を加えた拡大版G7の下でも更に進展するかも知れない。
 迷走したトランプ前政権の後任であるだけに、自身のために旗振り役としての役割を再定義することは、とりわけアジアとインド太平洋地域に関するバイデン大統領の外交戦略を定義することになる。
 
クアッド制度化への試み?
 QLSへの支持または参加については、日本、豪州、インドのいずれの国も公式にはコメントしてはいないが、このような枠組みは間違いなくクアッドを強化することとなる。クアッドは21世紀のアジアにおいて最も重要な枠組みであると言えるだろう。同様の制度化は、常に日本の安倍晋三前首相の目標でもあった。