皆さん、こんにちは。歴史的な台湾海峡の平和と安定について、52年ぶりに日米首脳が共同声明を出しました。その直後、日本戦略研究フォーラムの定例シンポジウムで台湾問題についてお話しできることを大変嬉しく思います。またこれまで意欲的に台湾問題についての研究を続けてこられた日本戦略研究フォーラムに敬意を表したいと思います。
私は退官して5年になりますが、この間、色々な場において中台紛争はまさに日本有事なんだと意見を述べて参りましたが、本日もそのような問題意識に立ち、少しでも日本の安全保障が改善されることを願いお話したいと思います。先程、屋山会長からもご紹介がありましたが、本日皆様に配られた『自衛隊最高幹部が語る令和の国防』(新潮新書)の中でも台湾問題について触れています。この本は兼原さんのお声がけにより、海自の武居君、そして空自の尾上君と私の4人で幅広く安全保障問題を議論したものです。兼原さんは私が陸上幕僚長の時に国家安全保障局の次長をなさっていたということもあり、平成25年の防衛計画の大綱策定において陸上自衛隊を大改革する際には、大変お世話になった方で、兼原さんなくしては今の陸上自衛隊の改革はあり得ないというのが実感です。台湾問題についても議論した本書の発刊日が、台湾海峡の平和と安定について取り上げた歴史的な日米共同声明がタイミング的に同時期になったことにも嬉しく思います。
本題に入りますが、本の中で触れている台湾問題についての認識をもう一歩踏み込んだ「軍事のリアル」という観点で、中台紛争は日本の有事になるということを焦点にご説明いたします。
2017年10月の中国共産党大会で習近平主席は約3時間半の熱弁を振るいました。その中で30数回「中国の夢」「中華民族の偉大なる復興」ということを強調しました。その具体化のために、中国は「接近阻止(A2)/領域拒否(AD)」戦略を立てています。これは東シナ海と南シナ海を中国の「核心的利益」として守り通すため、南西諸島~台湾~フィリピンを連ねる所謂第1列島線という要線を設定してその領域を守る。次にそのバッファーゾーン(緩衝地帯)として所謂第2列島線である小笠原諸島~グアム~パプアニューギニアのライン以西への米軍の接近を阻止するという戦略です(図1)。
この領域を守る、寄せ付けないという戦略具体化のための手段として、中国が力を入れてきた3つの顕著な軍事的能力の増大について説明します。
その1つが中距離弾道・巡航ミサイルです。