巧妙化する中国のプロパガンダ工作

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産経新聞社月刊「正論」編集長 田北真樹子

はじめに
 本題に入ります前に、まずは日本のメディアについてお話したいと思います。率直に結論を申しますと、日本のメディアの現在の在り様は、中国リスクと向き合う上で1つの障害になっているのではないかということです。
 4月16日、日米首脳会談が行われました。その後に発表された日米首脳共同声明を見た私の感想は、日本を取り巻く安全保障環境が一段落上がり、これまでとは比較にならないほど厳しい状況になったというものです。つまり、日本、そして菅義偉首相は、安倍晋三前首相の時代よりずっと重い責任を負ったわけです。これからの日本に問われるのは、日米首脳会談でコミットしたことを実現し責任を果たすことです。しかし、首相が国家のための決断を下そうとすればそれを拒んだり、邪魔したりする勢力が日本国内にはいます。その中の1つにメディアがあるということは否定できません。
 例えば、外資による土地買収を規制する土地利用規制法案のように、政治が日本にとって望ましい方向に進もうという時に、横槍が入ります。今回の場合は公明党でした。メディアは「こんなにも抵抗がある」と書き立てるので総選挙などを意識する自民党は及び腰になり、法案は中途半端になってしまいます。また、横槍の最たるものには憲法改正があります。第9条に象徴されるように憲法は様々な面で改正待ったなしの現状にあるのに、議論がなかなか進まない。菅首相は訪米中にニューズウィークの単独インタビューを受けた際、ご本人も憲法改正の重要性は認識しているが状況は困難である、と回答しています。その理由は、国会の状況が最も大きいのですが、その国会の動きの前提となる世論がついて来ないと考えているからです。メディアは憲法改正をさせないよう反対を掲げており、テレビの影響は侮れません。憲法改正が進まないのは、メディアにも大きな責任があるのです。
 安全保障環境等を巡る最近の情勢変化は非常にスピードが速いのですが、メディアはそれに追いついていません。3、4月の例を挙げますと、朝日新聞がスクープしたLINE問題では、他の新聞社が後追いで報道はしましたが、その後はニュースを見かけなくなりました。この時点でLINEに対するメディアの関心はなくなった、と言うより、いまだにメディアの人間がLINEを使用しているのです。安全保障上の問題があるとメディアが認識していないので、世の中に警鐘を鳴らすこともないのです。
 また、楽天に対する日本郵政と中国ネット大手の騰訊控股(テンセント)子会社からの出資問題があります。