クアッドにおける印米関係の発展

.

マノハール・パリカル国防研究所東アジアセンターセンターコーディネーター兼リサーチフェロー ジャガンナート・パンダ

はじめに
 多極化が進む世界秩序において、地域の政治を際立たせているものは多国間での関与であり、これは各加盟国の間にある強固な二国間関係に根差しているものである。例えば、日米豪印戦略対話(クアッド)がインド太平洋地域の地政学を定義付ける最も決定的な枠組みの1つとして登場したものであることには、殆ど議論の余地はない。クアッドの継続的な進展を確保するためにも、メンバー国それぞれが強固な二国間関係を維持する努力を怠らないことが極めて重要である。「自由で開かれた、そして包括的かつ健全であり、民主的価値観に支えられ、そして強制力に依らない」インド太平洋地域の構築への継続的なコミットメントからクアッドの「志を同じくする」精神が生まれていることもあり、クアッドの中で最も古い民主主義国家(米国)と最も大きな民主主義国家(インド)の関係は一層の重要性を帯びている。「クアッド首脳会議(Quad Leadership Summit:QLS)」は成功裡に終わったが、印米パートナーシップは、特にクアッドという側面において、どのようにより強固なものとなるであろうか。
 
印米関係の進展
 2017年の再開後のクアッドは、メンバー国が相手国と抱える諸問題を改善するために活発に取り組んだ成果の中で発展したにとどまる。しかし今日では、クアッドの中では最も関係が弱い2ヵ国としてよく引き合いに出されるインドと豪州でさえ、包括的戦略パートナーシップを締結する程に関係が発展している。さらに、最近開催されたQLSでは、ここ4年の間に高官及び閣僚級会合の場を設けながら初めてとなる共同声明が発表されており、中国が自己主張的な行動を取っている極めて重要なタイミングに、政治的に団結したクアッドのメカニズムが大きく進展する様子を見せている。
 同盟国及びパートナー国との強力な関係の再構築を通じ、米国に世界を「再びリード」させようとしているバイデン大統領の尽力は、政権発足後の数ヵ月のうちに早くも目に見える形となっている。バイデン政権下での日米「2+2」の他、米国のロイド・オースティン国防長官によるインドのラージナート・シン国防大臣訪問やバイデン大統領と豪州のスコット・モリソン首相との電話会談が行われたことは、トランプ前大統領時代の外交政策をバイデン大統領が早々と転換した序章であることを示している。このような展望の中で、米国のジョン・カービー国防総省報道官は、インドを特に「インド太平洋地域における諸問題」に対処する「極めて重要なパートナー」と呼んでいる。