『共産党宣言』の序文は、「ヨーロッパに幽霊が徘徊している―共産主義という幽霊だ」と始まる。共産党宣言はその後、ヨーロッパのみならず地球全体を汚染、いまなお人類を苦しめている。いま中国にも幽霊が徘徊している。毛沢東という幽霊だ。習近平中国共産党総書記は、「中華民族の偉大な復興」という「中国夢」を実現すると豪語、かつて抗日戦争時に毛沢東が用いた「持久戦」思想を復活させてアメリカと闘い続ける構えだ。日米を始めとする自由社会は中国との長期戦に備えなければならない。
米国に指図する中国
タリバンがアフガニスタンの首都カブール入りした翌日の2021年8月16日、中国の王毅外相は米国のアントニー・ブリンケン長官との電話会談でこうまくし立てた。アフガニスタンに「外来(米国)の様式を無理に適用しても馴染まないことが改めて証明された。これを教訓に米国は真剣に反省すべきだ」。さらに、「中国はアフガニスタン問題で米国に協力する用意はあるが、米国は、一方では中国の合法的な権益を損なうような意図的な封じ込めや抑圧を行いながら、他方では中国に支援や協力を期待することはできない」と。遠慮のない王氏の言葉からは、中国の大国意識が滲み出ていることが分かる。国際的に重要な問題で米国は中国の協力なしには何もできない、勝手に振舞ったら痛い目に遭う、行動を慎重にせよ、と米国に警告したのだ。
王氏の自信に満ちた強い態度は、勘違いによるものかも知れないが、今日の中国の経済力と軍事力、そして国際社会における中国の影響力を考えれば、虚勢を張っていると侮るわけにはいかない。習近平政権以前の中国は「韬光养晦(とうこうようかい)」を外交方針に掲げ米国との対立を避けてきたが、習近平政権になってから本性を丸出しにした。その背景に中国経済の飛躍的な発展があるのは言うまでもない。
改革開放を始めた初期の1980年の中国の国内総生産(GDP)は日本の5分の1、米国の14分の1しかない1,911億ドルだったが、いまや14兆7,300億ドル(約1,550兆円)と、米国GDPの70%を超えた。中国のGDPは最初に集計された1952年の679億人民元から2020年には101兆5,986億人民元へと、68年間に300倍以上も増えている。英国のシンクタンク、経済経営研究所(CEBR)は「中国のGDPが米国を陵駕するのは2028年だろう」と予想する。中国共産党創建100周年記念式典で習氏は「1840年のアヘン戦争以降、中国は(外国から)屈辱を受け、人民は苦しみ文明は埃にまみれ、中華民族は前代未聞の災禍に見舞われた。