中露関係100年、 「準同盟」は日本外交に脅威

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拓殖大学海外事情研究所教授 名越健郎

 国際通貨基金(IMF)が公表した2020年の世界の国内総生産(GDP)国別ランキングによれば、世界2位の中国のGDPは14兆7,228億ドルで、11位のロシア(1兆4,735億ドル)の約10倍に上った。国民1人当たりのGDPでは、世界63位の中国は10,484ドルで、65位のロシア(10,037ドル)を上回った。
 古い統計はないが、豊かさを示す1人当たりのGDPで、中国がロシアを上回ったのは歴史上初めてと見られる。昨年まではロシアがわずかに上回っていたが、中国は新型コロナ禍でも2.3%のプラス成長を維持したのに対し、ロシアはマイナス3.1%で中国に抜かれ、GDP全体でも10倍の差が付いた。
 ロシア経済は過去10年、年率1%程度の低成長に沈んでおり、中国との格差は広がる一方だ。しかし、長い中露の歴史で、ロシアは一貫して兄貴分で、先進的な大国だった。帝政ロシアは18、19世紀、中国の領土を奪い、20世紀には中国を支援し、経済援助を与えた。その後、ソ連崩壊などでロシアが混乱する間、中国は1970年代以降の改革・開放路線が成功し、ロシアに追いつき、追い越した。
 近年、「準同盟関係」と称される中露両国は「対等な互恵関係」を標榜するが、経済規模では圧倒的な差が付き、今後は中国が兄貴分、ロシアが弟分の役回りになろう。この歪な二国間関係の新展開は、将来の火ダネになりかねない。とは言え、米国という「共通の敵」がある限り、中露の連携は維持されるだろう。
 本稿では、中国共産党発足100周年を機に、過去100年の中露関係の歴史を概観し、現状と将来を展望する。
 
コミンテルン中国支部
 中国共産党は今年7月1日に党創設100周年を祝い、北京で式典を開いたが、実際の創設100周年記念日は、東京五輪開会式のあった7月23日だった。中国共産党創設大会は中華民国の時代の1921年、上海のフランス租界で行われ、建国の父・毛沢東、陳独秀ら党員13人が参加した。創設はソ連共産党傘下のコミンテルン(国際共産党)の指示だった。
 1917年にロシア革命を成功させたレーニンやトロツキーは、各国の革命工作に当たるコミンテルンを設立。中国共産党は当初、コミンテルン中国支部と言われた。22年7月には、コミンテルン日本支部が誕生しており、来年は日本共産党の建党100周年に当たる。
 レーニンは、「欧州の革命なしに、ロシアで権力を維持するのは困難」との立場から、西欧で革命運動を扇動したが、ドイツや英国での工作は大衆の支持を得られず失敗した。