チベット解放(侵略)70年
―「文化的ジェノサイド」が繰り広げられる 我が祖国―

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政策提言委員・拓殖大学国際日本文化研究所教授 ペマ・ギャルポ

噓とハッタリのオンパレード
 中国発の新型コロナウイルスの蔓延により、世界中が混乱している。未だ収束の目途は立っていない。そんな中、2021年7月、中国政府は2つの大きな記念行事を開いた。
 まず第1は、中国共産党創立100年である。天安門広場で開催された記念式典で習近平国家主席は1時間余りに亘って国内外に向けスピーチを行った。「中国共産党創立以来の100年の歴史、中華人民共和国成立以降の70余年の歴史はすべて、中国共産党がなければ新中国はなく、中華民族の偉大な復興はなかったことを十分に証明している。歴史と人民が中国共産党を選択した」と自画自賛し、噓とハッタリを連発しながら、「偉大で光栄ある正しい中国共産党万歳。偉大で光栄ある英雄的な中国人民万歳」と叫ぶ習主席のパフォーマンスには笑うしかなかった。
 第2は、チベット解放(侵略)70年である。7月23日から3日間の日程で就任後初めてチベットに乗り込んだ習主席は「解放から70年でチベットの人々の生活は大きく改善した。中国共産党がなければ、新中国も新チベットもなかった。私たちのチベット政策は完全に正しかった」と語り、中国共産党の正統性をアピールした。チベット仏教寺院の僧侶たちと談笑する映像をテレビで観た筆者は虚しい気持ちになった。
 今日における中国の経済力、軍事力の増大は、中国人民を騙し、国際社会を欺き、中国の民主化に幻想を抱いてきた日本やアメリカの協力があったからに他ならない。祖国チベットを中国に奪われ、人生の大半を日本で過ごしてきた筆者からすれば、実に悲しいことである。
 近年、漸く日本のマス・メディアも、中国の正体に気付き始め、その脅威について報じるようになった。半世紀以上に亘って日本で中国共産党の恐ろしさを訴え続けてきた筆者としては、微かな安堵を感じている。しかし、政治家、財界人、学者、ジャーナリストといった所謂「知識人」の中には未だ「日中友好」を信じている人も少なからず存在している。チベットに関しては、その歴史はおろか、場所すら知らない人も多いのではないだろうか。
 
チベットの悲劇
 チベットは有史以来、誰もが認める独立した国家として、独自の言語と文字、宗教、文化、習慣を育んできた。チベットには、西にカラコルム山脈やラダック山脈、北はチャンタン高原、さらに南の国境に沿ってヒマラヤ山脈の巨大な岩壁が約2,400kmに渡って走っている。