中国共産党の100年と印中関係

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マノハール・パリカル国防研究所東アジアセンターセンターコーディネーター兼リサーチフェロー ジャガンナート・パンダ

はじめに
 中国共産党結党100周年は、中国にとって政治的な偉大さと勝利の節目を祝うものであった。天安門広場で行われた仰々しい式典を世界各国の政府が目にしていた中、習近平国家主席の記念演説は、「いま意気軒高として近代的社会主義強国の全面完成という第2の100年の奮闘目標に向けて邁進」する中国政府と中国共産党が眼前に据える戦略への洞察をもたらした。これは世界の主要大国、特にアジア周辺国で中国のライバルへと変わりつつあるインドにとって、計り知れない戦略的含蓄を有するものである。それでは、中国共産党の100年は印中関係にとって何を意味するのであろうか。
 
信頼と信用の欠如
 (インドと中国が衝突し45年ぶりに死者を出した2020年の)ガルワン渓谷事件後、中国に対するインド政府の信用は、かつてない程に低く、印中間の不信が続いている中で、渓谷からの撤退にも長時間を要しており、両国の政治外交関係は不安定なままである。それと同時に、ガルワン渓谷での衝突後の1年間で、中国は再びインドにとって最大の貿易相手国となった一方で、インドは製造業の対中国依存からの脱却を目指す長期戦略の試みとして、日本及び豪州というパートナー国と「サプライチェーン・レジリエンス・イニシアチブ(Supply Chain Resilience Initiative:SCRI)」等の取り組みに着手している。技術分野においても、インドは2020年6月から禁じていた60近い中国製アプリを恒久的に利用禁止とした。また、特に最近の印中国境地帯の緊張化を背景に、インドはファーウェイ(華為)やZTE(中興通訊)といった中国通信企業を安全保障上の理由により5G審査から除外している。
 印中関係における不信は、ナレンドラ・モディ首相が2021年に行なった独立記念日演説の中でも強調されている。モディ首相はその中で、パキスタンと中国という両隣国の名指しは控えつつ「インドはテロリズムと拡張主義という2つの課題と戦い、着実かつ勇敢に対応している」と発言した。これに対し、中国側は「両国にとっての正しい道は、お互いを尊重しサポートすることである。これは長期的利益に資するものである」と信じており、「政治的な相互信頼関係」改善のためにインドと協力する意思がある、と述べている。しかし、ガルワン渓谷での衝突以降の最後の衝突ポイントであるホット・スプリングからの撤退がまだ残っているため、特に2020年9月に署名した実効支配線での迅速な緊張緩和を求める「合意5項目」の履行に中国が誠意を示さない限り、印中関係改善の可能性は低いままである。