不祥事に揺れる東芝を「日米共同監視企業」にするべき理由

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政策提言委員・経済安全保障アナリスト 平井宏治

東芝問題でも注目の物言う株主とは
 東芝が経済産業省に働きかけて物言う株主に圧力をかけたことが、今年6月10日の外部弁護士の調査報告書で指摘され、6月末の株主総会で取締役会議長らの再任案が否決された。
 調査報告書には、東芝の株主総会を巡るプロキシーファイト(委任状合戦)に経済産業省の参与(当時)が、米国のハーバード大学の基金運用ファンドに接触し、東芝側の人事案に反対しないように働きかけたなどと海外のメディアが報道したことなどが記載されている。
 この内容に基づき、物言う株主が、あたかも正義のヒーローであるかのような報道がなされ、物言う株主が正しいとする世論が醸成されつつある。果たしてこの分析や報道は正しいのか?
 今回の問題の発端は2006年まで遡る。東芝は事業多角化のため米国原子力大手のウエスチングハウスを入札で落札、買収した。ところが、2016年度第三四半期の決算発表は、買収したウエスチングハウスに約6,253億円もの簿外債務かあることが明らかになり当日急遽延期され、東芝は経営難に陥る。東芝経営陣は、上場廃止を避けるため、2017年、第三者割当増資(新株発行)で6,000億円を調達した。この結果、東芝の株主の約25%が物言う株主となり、高い配当や経営陣の受け入れなどを絶えず要求されることになった。
 そもそも物言う株主を含めたファンド(投資事業有限責任組合)とは何か。
 彼らは、まずファンド運営会社を設置し、次にファンドを組成する。その際、ファンドに資金を提供する投資家に内部収益率(一般的には20~30%)を確約してファンドへの投資を勧誘する。
 次に、ファンドが企業を買収し、一定期間株式を保有(実際は5年程度の保有が多い)する間に、リストラなどのコストカットや資産売却等を行い、買収した企業を第三者に転売する。因みに、内部収益率を25%とすると、最初にファンドに出資した100円が、5年後には244円になる。(実際は、「レバレッジをかける」といい、投資家からの資金の他にファンドも金融機関から借り入れを行って買収し全体のリターン率を下げるようにするが、投資家が出した資金が、約2.5倍になって戻ることは変わらない) そして、アクティビスト・ファンドと呼ばれる物言う株主は、M&Aに関連する投資ファンドの中で株主提案などを積極的に行うファンドのことだ。