インドと米国のパートナー関係は、長い間アジア及びアメリカ両大陸間の関係を繋いできた。両国は、敵対国やイデオロギー、ルールに基づく国際秩序の将来、多国間主義の促進に関する展望を共有する強力な現状維持国家として台頭している。2021年初頭にジョー・バイデン大統領の下で発足した米国新政権は、印米関係に新たな機会と挑戦をもたらした。そしてそれは1つの疑問を投げかけている。来るべき時代のインド太平洋地域において、この両国関係はどのように発展していくのだろうか。単に両国間の現状を維持するだけなのだろうか、或いは新しい現実を受け入れ、実体のあるパートナーシップに向けて動き出し、更には完全なる同盟関係となるのであろうか。
共生かつ自然なパートナー
それぞれ世界で最も古く大きな民主主義国家としての指導力と政府の並存は、印米の外交政策の展望を大きく形成している。この点において、インドのジャイシャンカル外務大臣が自著の中で強調したように、インドはトランプ前大統領時代における米国の外交政策の中でも殆ど無傷で乗り切ることができた。何故なら、インドは米国を失望させる同盟国と米国に脅威をもたらす競争国の「どちらでもなかった点で幸運だった」からである。
印米関係は2020年、「包括的でグローバルな戦略的パートナーシップ」へ格上げされ、2021年9月にはバイデン大統領とナレンドラ・モディ首相が初めて対面での会談を行い、更にこのビジョンを「グローバルな利益のためのパートナーシップ(A Partnership for Global Good)」へと強化した。
重要なことは、印米のパートナーシップにとって当面の大きな課題が、強力な戦略的提携の構築やクアッドの発展、パンデミックを念頭にした貿易と経済関係の向上、人的協力の拡大による民主的な交流の促進とされていることである。つまり、両国はパンデミック後の秩序の構築と修正主義国・中国に対処する構想における共通認識の模索に集中している。インド太平洋地域の安全保障を高めるために2国間関係を強化することは、急速に印米協力の極致となりつつある。
印米関係は、21世紀における極めて重要な安全保障パートナーシップではないとしても、最も緊密な関係の1つとなると見込まれているが、両国の間には完全な信頼関係があるわけではなく、真の「グローバル」な展望の達成が制約を受けていることに留意することは重要である。