中国は戦争をするのか

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顧問・東京国際大学特命教授 村井友秀

 「日本と中国は永遠の隣国である」と言われることがあります。これは事実ですが、この発言をする人の多くは「隣国は仲が良い」というイメージを持っていると思います。しかし、世界を見ると隣国は仲が悪いのが通例です。隣国は接触が多くなり、摩擦も多くなるからです(重力の法則)。
 
「カマキリと車」の日中関係
 日中関係を考えるときに「今まで関係が悪かったけれどもこれからは良くなる」という話をする人がいます。例えば中国の王毅外相がよく言う「日中の二千年の関係を見れば、日中が対立したのは20世紀の初めの50年間だけだ。その他の1950年間は日中関係は良かった」という話です。駐日大使をしていた王毅外相に何度か会ったことがありますが、必ずこの話をしました。耳触りの良い言葉なので日本の政治家も「日中関係は基本的には平和なんだ。戦争の時代は異常なんだ」とよく言います。
 但し、注意しなければならない点があります。中国共産党の幹部と日中関係について話をすると、「日中関係でどうして摩擦が起こるのか。それは日本が中国の言うことを聞かないからだ」と言います。「中国の言うことを日本が100パーセント聞けば何の問題もない」、「日本は小さな国のくせに生意気にも中国の言うことに反抗するから問題が起こる。」そういう言い方です。
 例えば尖閣諸島に関して「中国は中国領と言っているので、日本も『そうです』と言えば何も問題はない」というわけです。「中国が中国領と言っているのに、日本が『いや、そうじゃない。日本領だ』と言うから問題が起こるので、問題が起こるのは日本側の責任だ」と、こういう言い方をするのです。
 日本と中国の往来が活発になった百数十年前の中国の新聞にもそう書いてあります。日中関係は「カマキリと車(蟷臂当車)」のようなものだ。要するに、格も違うし大きさも違う。カマキリが車に対抗するのは有り得ない話だ。当時の中国の新聞には、「君臣の違いが判らないのか(何ぞその君臣の自ら量るを知らざる)」と書いてある。「日本は野蛮国で、どっちが上位でどっちが下位だということが分からないのだ(区区にして上国に抗衡せんと欲す)」と書いてあります。そういう感覚が今でもある。要するに、中国政府が「日中関係は平和だ」といった時に、決してそれは対等な関係を意味していないのだということを、日本人は認識しておくべきだと思います。
 
「孫子兵法」と共産主義
 次に日中戦争の可能性について考えてみたいと思います。