国連発の家族解体政策に警戒を

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政策提言委員・評論家 江崎道朗

ニューディール連合と米国共産党
 ソ連邦の崩壊とともに、マルクス・レーニン主義は終わったかのように言われたが、残念ながら、その変異株が欧米、そして日本を根底から揺さぶっている。
 意外なことに、自由主義陣営のリーダーであるアメリカは戦前からマルクス・レーニン主義の影響を強く受けていたのだ。
 そのことを教えてくれたのは、2006年8月に訪米した際に会ったヘリテージ財団のリー・エドワーズ博士だった。彼は、アメリカの学会もマスコミもサヨク・リベラルに乗っ取られ、自分たちアメリカの保守派の歴史が知られていないことを憂慮し、『A Brief History of the Modern American Conservative Movement』という本を書いていた。その本の存在を知った私は即座に邦訳許可をもらい、『現代アメリカ保守主義運動小史』(明成社刊。2021年、育鵬社から復刊)として発刊した。
 この本を踏まえ、アメリカにおけるマルクス・レーニン主義、社会主義と政治との関係についてまず概観しておこう。
 アメリカは共和党・民主党の二大政党が互いに政権を争い、選挙の勝敗によってその二大政党のいずれかが政権を預かる二大政党制の国だ。そして第16代大統領エイブラハム・リンカーン(1861~1865年)から第31代大統領ハーバート・フーバー(1929~1933年)までの72年間、共和党の方が圧倒的に強力だった。リンカーン大統領の時に南北戦争があって、共和党は勝った北軍の側だったので、その後もずっと多数派の地位を維持し続けたのだ。日本で言えば幕末から明治維新、大正、そして昭和の満州事変に至るこの72年間に選挙で勝った民主党の大統領はグロバー・クリーブランド(1885~1889年、1893~1897年)とウッドロウ・ウィルソン(1913~1921年)の二人だけで、いずれも共和党の内紛のおかげで勝てたに過ぎない。
 民主党の第28代ウィルソン大統領の後、1920年代のアメリカは共和党政権の下で空前の経済的繁栄を迎えた。ところが共和党の第31代フーバー大統領のとき、暗黒の木曜日に端を発する世界恐慌が起こった。1929年10月24日木曜日、ニューヨーク証券取引所で空前の株価大暴落が起こり、その影響がアメリカ経済全体に広がり、さらには世界各国も巻き込んで空前の長期経済不況に突入した。世界恐慌の影響はすさまじく、アメリカ経済は1933年の時点で1919年比で名目GDPは45%減少、株価は80%下落、工業生産は30%低下、農産物価格は3分の1になり、失業率は25%にまで悪化した。