マルクス・レーニン主義こそが最大の変異株

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政策提言委員・元参議院議員 筆坂秀世

マルクス・レーニン主義は本当に科学的か
 私が日本共産党に入党したのは、ほぼ半世紀前だった。当時の日本共産党規約は手元にはないが、手元にある最も古い党規約には次のようにある。
 
 《党は、人類の科学的成果を総括してマルクスとエンゲルスがうちたて、レーニンが発展させ、その後の国際共産主義運動の前進によってゆたかにされた科学的社会主義、すなわちマルクス・レーニン主義を理論的基礎とする》(規約前文)
 
 党員の義務を定めた規約第二条には、《マルクス・レーニン主義の理論と党の諸決定の学習につとめ、自己の理論的、思想的、政治的水準をたかめる》とある。
 日本共産党がマルクス・レーニン主義を「科学的社会主義」と言うようになったのは、私が入党してかなり後のことである。共産党と言えども、日本の政党が「自分たちはマルクス・レーニン主義の党です」というのでは、国民にその時点で受け容れてもらえないからである。現在の規約では、「科学的社会主義を理論的な基礎とする」とだけとなっている。マルクスやレーニンの名前は、一切使われていない。党綱領でも、ロシア革命の叙述の中でレーニンの名前が出てくるだけである。
 この「科学的」というのが、共産党員にとって魔法のような響きを持つ言葉なのである。科学的という表現には、「絶対的に正しい理論」ということが含意されているからだ。問題は、この理論が本当に科学的なものなのかどうかである。
 マルクス、エンゲルス以前にも社会主義思想はあった。16世紀にイギリスの思想家トマス・モアの『ユートピア』が出版されるが、その内容は共産主義思想を想起させるものだった。住民はみな美しい清潔な衣装を身に着け、財産を私有せず、必要なものがあるときには共同の倉庫のものを使う。人々には勤労の義務があった。だが個性が否定される管理社会でもあった。フランスのサン・シモンらも社会主義思想を唱えた。だがこれらの社会主義思想は、資本主義への批判や未来社会への予見はあったが、その道筋を発見することが出来なかった。そのためマルクス主義者からは「空想的社会主義」と呼ばれた。
 エンゲルスの有名な著書に『空想から科学へ』というのがある。この中でエンゲルスは、マルクスの唯物史観と剰余価値学説の発見によって、社会主義は科学となったと宣言した。
 レーニンは、マルクス主義について多くのことを語っているが、その1つを紹介する。